HIVの初期症状は風邪と勘違いされやすい理由とは
「熱が出て、喉が痛くて、体もだるい。もしかしてHIVの初期症状では…」心当たりのある性行為のあとにこうした症状が出ると、不安でインターネットを検索し続けてしまう方もいるのではないでしょうか。
実際、HIVの感染初期の症状は風邪やインフルエンザとよく似ており、勘違いされやすいことが知られています。しかし同時に、症状だけでHIV感染の有無を判断することはできません。
この記事では、なぜ勘違いが起きるのか、そして何をすべきかを解説します。
HIVの初期症状が「勘違い」されやすい理由
HIVに感染すると、感染成立の2〜3週間後に体内のウイルス量が急速にピークに達し、この時期に発熱・咽頭痛・筋肉痛・皮疹・リンパ節腫脹・頭痛といった症状が現れることがあります。これらはインフルエンザや伝染性単核球症によく似た症状であり、多くの方が「風邪をひいた」「疲れが出た」と受け止めてしまいます。
さらに勘違いを生みやすいのが、症状の強さに大きな個人差があるという点です。国立健康危機管理研究機構の資料によると、HIVの感染初期の症状は「全く無自覚の程度から、無菌性髄膜炎に至るほどの強いものまで、その程度は様々」とされています。つまり、まったく症状が出ない方もいれば、入院が必要なほど強い症状が出る方もいるということです。
(出典:国立健康危機管理研究機構「HIV感染症/AIDS(後天性免疫不全症候群)(詳細版)」)
いだてんクリニックでも、「ネットで調べた初期症状と自分の症状がそっくりで不安になった」というお問い合わせを多くいただきます。しかし症状の一致は、感染の証明にも否定にもなりません。
HIVの感染初期に現れうる症状
HIVの感染初期に報告されている症状には、以下のようなものがあります。ただしこれらはいずれもHIVに特有のものではなく、他の感染症や体調不良でも起こりうる症状です。
・発熱
・咽頭痛(喉の痛み)
・筋肉痛・関節痛
・皮疹(全身に広がる発疹)
・リンパ節腫脹(首・脇・足の付け根の腫れ)
・頭痛
・強い倦怠感
これらの症状は数日から10週間程度続き、多くの場合は治療をしなくても自然に軽快します。この「自然に治まる」という点も、勘違いを大きくする要因です。症状が消えたことで「やっぱり風邪だった」と判断してしまい、検査を受けないまま無症候期へ移行してしまうケースが少なくありません。
なお、感染初期の症状が出た時期に梅毒・淋菌感染症・尖圭コンジローマ・クラミジアなど他の性感染症も同時にみられる場合、HIV感染を考慮すべきとされています。性感染症の症状と全身症状が重なっている場合は、特に注意が必要です。
HIVをはじめとする性感染症は、症状が出ないまま経過することも少なくありません。無症状でも検査を受けるべき理由については、下記のページも参考にしてください。
なぜ「症状だけ」ではHIV感染を判断できないのか
不安を抱えている方にとって最も重要なのは、症状の有無や種類からHIV感染を判断することはできないという事実です。この章では、症状だけで判断できない理由を3点に分けて解説します。
症状がHIVに特有のものではないから
HIVの感染初期に現れる発熱・咽頭痛・皮疹・リンパ節腫脹といった症状は、インフルエンザ・EBウイルス感染症(エプスタイン・バーウイルス感染症)・風邪・その他のウイルス感染症などでも同様に起こります。医師であっても、症状の見た目や訴えだけでHIV感染かどうかを判断することはできません。診断には血液検査が必要です。
自己診断はあくまで受診の目安としていただき、症状の一致・不一致で結論を出さないことが大切です。「症状が当てはまるから感染している」「当てはまらないから感染していない」のどちらも、医学的な根拠にはなりません。
まったく症状が出ない場合があるから
前述のとおり、HIVの感染初期は「全く無自覚の程度」の方もいます。つまり、感染していてもまったく症状が出ないケースが存在するということです。「体調に変化がなかったから大丈夫」という判断は、感染していないことの証明にはなりません。
心当たりのある性行為があった場合は、症状の有無にかかわらず適切な時期に検査を受けることが、唯一の確実な確認方法です。
症状が自然に消えても感染は続いているから
HIVの感染初期の症状は数日から10週間程度で自然に軽快しますが、これは治癒を意味しません。急性期のあとには数年から十数年におよぶ無症候期が続き、その間も体内ではCD4陽性リンパ球が徐々に破壊され続けます。症状が消えたことをもって「治った」と考えると、発見が大きく遅れることになります。
(出典:国立健康危機管理研究機構「HIV感染症/AIDS(後天性免疫不全症候群)」)
HIV検査はいつから受けられるのか
HIVには「ウインドウ期」と呼ばれる、感染していても検査で検出されない期間があります。この期間内に検査を受けると陰性と判定されることがあるため、検査を受けるタイミングを理解しておくことが重要です。この章では検査時期について、2点に分けて解説します。
検査方法によって検査可能な時期が異なる
HIVの検査方法によって、検査可能になるまでの期間が異なります。いだてんクリニックでは、感染機会からHIV-RNA検査は2週間以降、第4世代抗原・抗体検査は4週間以降を検査時期の目安としています。
| 検査方法 | 検出するもの | 検査可能時期の目安 |
|---|---|---|
| HIV-RNA検査 | HIVのRNA | 感染機会から2週間以降 |
| 第4世代抗原・抗体検査 | HIV-1 p24抗原+抗HIV抗体 | 感染機会から4週間以降 |
検査を受ける時期が早すぎる場合は、感染していても陰性となることがあります。感染機会からの日数や症状、PEPの使用状況などによって適切な検査時期が異なることがあるため、受診時に医師へご相談ください。
当院ではRNA検査は2週間以降、第4世代検査は4週間以降が目安
感染機会から2週間以降であればHIV-RNA検査、4週間以降であれば第4世代抗原・抗体検査を受けることができます。感染機会から十分な期間が経過していない場合は、適切な時期まで待って検査するか、医師の判断で再検査をご案内する場合があります。
なお、感染リスクのある行為から72時間以内であれば、PEP(Post-Exposure Prophylaxis:曝露後予防)によって感染を防げる可能性があります。72時間を過ぎると効果が期待できなくなるため、時間の経過が浅い場合はまずPEPの適応について医師にご確認ください。
HIVの予防薬PrEP(Pre-Exposure Prophylaxis:曝露前予防)については、下記のページも参考にしてください。
疾患ごとの潜伏期間と検査が可能になる時期については、下記のページも参考にしてください。
不安なときにすべきこと・すべきでないこと
「HIVの初期症状かもしれない」と不安になったとき、行動の選び方によって結果が大きく変わります。ここでは、不安を抱えている方に知っておいていただきたい行動の指針を整理します。
・心当たりのある性行為の時期を確認する
・72時間以内であればPEPの適応について医師に確認する
・感染機会から適切な時期に検査を受ける
・検査時期が早すぎた場合は、医師の案内に従って適切な時期に再検査を受ける
・HIV以外の性感染症も同時に検査する
避けたほうがよいこと
・症状の有無だけで「感染している/していない」と結論づける
・症状が自然に消えたことで「治った」と判断する
・インターネットの症状情報だけを繰り返し確認し、検査を先延ばしにする
・不安なまま何もせず時間だけが経過する
HIVは早期に診断できれば、その後の治療および経過に大きく有利になるとされています。現在は抗ウイルス薬による治療でウイルス量をコントロールでき、早期に治療を始めれば免疫力を落とすことなく通常の生活を送ることが可能です。不安を抱え続けるより、検査で事実を確認することが心理的にも医学的にも最善の選択です。
HIVを含む性感染症の検査・治療については、下記のページも参考にしてください。
検査ごとの費用については、下記のページも参考にしてください。
いだてんクリニックのHIV検査
いだてんクリニックでは、大阪院・博多駅前院のどちらでもHIVの検査に対応しています。HIV単独ではなく、梅毒・淋菌感染症・クラミジアなど複数の性感染症をまとめてスクリーニングすることも可能です。感染初期の症状が出た時期に他の性感染症も同時にみられることがあるため、リスクのある性行為があった場合は複数疾患を合わせて確認することをおすすめします。
大阪院は天満駅・扇町駅から、博多駅前院は博多駅からアクセスしやすい場所にあります。診療時間は院によって異なりますので、ご希望の院を選択して予約画面からご確認ください。「何を検査すればいいかわからない」という段階でも、問診をもとに医師が状況に応じた検査項目をご提案しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
受診の流れについては、下記のページも参考にしてください。
まとめ
・HIVの感染初期の症状はインフルエンザや伝染性単核球症に似ており、勘違いされやすい
・症状の程度には大きな個人差があり、まったく無自覚の場合もある
・初期症状は数日から10週間程度で自然に軽快するが、治癒したわけではない
・症状だけでHIV感染の有無を判断することはできず、検査が必要
・HIV-RNA検査は感染機会から2週間以降、第4世代抗原・抗体検査は4週間以降が検査時期の目安
・感染リスクのある行為から72時間以内であればPEPの適応を確認できる
「HIVの初期症状かもしれない」という不安は、インターネットで症状を調べ続けても解消されません。確認できる唯一の方法は検査です。いだてんクリニックでは、大阪院・博多駅前院のどちらでもHIVをはじめとする性感染症の検査に対応しています。不安を抱えたまま時間を過ごすより、まずは受診をご検討ください。
よくある質問
HIVの初期症状はどのくらい続きますか?
HIVの感染初期の症状は、数日から10週間程度続き、多くの場合は自然に軽快するとされています。ただし症状が消えても感染そのものが治癒したわけではなく、その後は数年から十数年におよぶ無症候期に移行します。「症状が治まったから大丈夫」という判断は避け、心当たりがある場合は検査を受けてください。
症状がまったく出なければHIVに感染していませんか?
いいえ、そうとは限りません。HIVの感染初期の症状は「全く無自覚の程度」から強いものまで個人差が大きく、症状が出ないケースも存在します。症状の有無は感染の有無を判断する材料にはなりません。リスクのある性行為があった場合は、症状にかかわらず適切な時期に検査を受けることが確実です。
風邪とHIVの初期症状はどう見分けられますか?
症状の見た目や訴えだけで見分けることはできません。発熱・咽頭痛・皮疹・リンパ節腫脹といった症状は、インフルエンザ・EBウイルス感染症・その他のウイルス感染症でも起こります。
感染してすぐに検査を受ければわかりますか?
感染直後はウインドウ期にあたり、検査で陰性と判定されることがあります。当院では、HIV-RNA検査は感染機会から2週間以降、第4世代抗原・抗体検査は4週間以降を検査時期の目安としています。感染機会からの日数やPEPの使用状況などによって適切な検査時期が異なることがあるため、医師にご相談ください。
HIVの検査で陰性だったのに不安が消えません。
検査時期が早すぎた場合は、感染していても陰性となることがあります。HIV-RNA検査は感染機会から2週間以降、第4世代抗原・抗体検査は4週間以降が目安です。適切な時期に検査を受けて陰性が確認されても不安が強く続く場合は、その旨も含めて医師にご相談ください。
いだてんクリニックでHIV以外の性感染症も同時に検査できますか?
はい、対応しています。HIVのほか、梅毒・淋菌感染症・クラミジアなど複数の性感染症をまとめてスクリーニングすることが可能です。大阪院・博多駅前院のどちらでもご相談いただけます。感染初期の症状が出た時期に他の性感染症も同時にみられることがあるため、リスクのある性行為があった場合は複数疾患を合わせて確認することをおすすめします。
HIV・梅毒の検査を検討されている方は、下記のページも参考にしてください。