クラミジアに何年も気づかない?無症状感染のリスク
「パートナーが陽性だったけれど、自分はずっと症状がなかった」「健診で偶然見つかったが、いつ感染したのかわからない」クラミジアは、感染していても自覚症状が乏しく、長い期間気づかないまま経過することがある性感染症です。
その間に体の奥へ炎症が広がったり、気づかないままパートナーにうつしたりすることもあります。
この記事では、なぜ何年も気づかないことがあるのか、放置するとどうなるのか、どのタイミングで検査を受ければよいのかを解説します。
クラミジアに何年も気づかないことはある
クラミジアに感染していても症状がなく、長期間気づかないまま経過することはあります。クラミジアは日本で最も多い性感染症とされていますが、その大きな理由の一つが、自覚症状の乏しさです。
国立健康危機管理研究機構の資料では、妊婦健診において正常妊婦の3〜5%にクラミジアの保有者がみられることから、自覚症状のない感染者はかなり多いものと推測されると説明されています。妊婦健診で初めて見つかる方が一定数いるということは、それまで気づかないまま過ごしていた方がいるということでもあります。
いだてんクリニックにも、「パートナーが陽性と言われて検査したら自分も陽性だった」「症状はまったくなかった」という方が来院されます。症状がないことは、感染していないことの証明にはなりません。
(出典:国立健康危機管理研究機構「性器クラミジア感染症(詳細版)」)
気づかないまま経過してしまう理由
なぜクラミジアは気づかれにくいのでしょうか。この章では、その理由について3点に分けて解説します。
女性は自覚症状が乏しいことが多い
女性がクラミジアに感染すると、まず子宮頸管に炎症が起こります。しかし、この子宮頸管炎は自覚症状に乏しいことが多く、おりものが少し増える程度で済んだり、まったく変化を感じなかったりします。
女性では子宮頸管炎や骨盤内付属器炎、不妊などを起こすものの自覚症状の乏しい場合が多く、そのため潜伏期間を特定するのは困難であるとされています。症状が出ないまま炎症だけが進むことがある点が、女性のクラミジアの難しいところです。
また、おりものの変化や軽い下腹部の違和感があっても、体調や生理周期による変化と考えて受診に至らないこともあります。結果として、何年も気づかないまま経過することがあります。
男性も軽い症状で終わることがある
男性のクラミジアでは尿道炎が最も多く、排尿時の痛みや尿道の不快感、むずがゆさなどが出ることがあります。ただし、淋菌による尿道炎に比べて症状が軽いことが多く、「少し違和感があるけれど、そのうち治まった」という経過をたどることも少なくありません。
症状が軽く自然に気にならなくなると、受診せずにそのままにしてしまいがちです。しかし症状が落ち着いても感染が治ったわけではなく、体内には菌が残っている可能性があります。男性の場合も、気づかないままパートナーにうつしてしまうことがあります。
のどや肛門の感染は症状が出にくい
クラミジアは性器だけでなく、オーラルセックスによってのどに、アナルセックスによって肛門や直腸に感染することがあります。
のどや肛門への感染は、通常は症状が出にくいとされています。性器の検査だけを受けて陰性だった場合でも、のどや肛門に感染が残っている可能性があるため、リスクのあった部位に応じて検査することが大切です。
(出典:厚生労働省「オーラルセックスによる性感染症に関するQ&A」)
長期間気づかないと起こりうること
自覚症状がないまま感染が続くと、体の奥へ炎症が広がることがあります。この章では、起こりうることについて3点に分けて解説します。
女性に起こりうる合併症
女性では、子宮頸管の炎症が上へ広がることで、骨盤内付属器炎(骨盤内炎症性疾患)を起こすことがあります。さらに炎症が広がると、肝臓の周囲に炎症が及ぶ肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を起こすこともあります。
こうした炎症が長引くと、卵管に癒着や通過障害が生じ、不妊の原因になることがあります。不妊の検査をきっかけに、過去のクラミジア感染がわかるケースも少なくありません。症状がないまま進行し、あとから妊娠に関わる形で表面化することがある点は、クラミジアで特に注意したいところです。
(出典:国立健康危機管理研究機構「性器クラミジア感染症(詳細版)」)
妊娠・出産への影響
クラミジアは、不妊だけでなく流早産の原因になることもあるとされています。また、妊婦が感染していると、出産時に産道を通じて赤ちゃんに感染し、新生児の肺炎や結膜炎を起こすことがあります。
妊婦健診でクラミジアの検査が行われるのは、こうした母子感染を防ぐためです。妊娠を考えている場合は、健診を待たずに一度検査を受けておくと、治療を済ませたうえで妊娠に臨むことができます。
男性に起こりうる合併症
男性では、尿道炎から炎症が広がって精巣上体炎を起こすことがあります。クラミジアは若年層の精巣上体炎の原因の一つとされています。精巣上体炎になると、陰嚢の腫れや痛み、発熱などが起こり、日常生活に支障が出ることもあります。
また、症状が軽いまま感染が続くことで、パートナーへうつし続けてしまう可能性もあります。男性側に自覚症状がないことが、パートナーの感染が繰り返される背景になっていることもあります。
「いつ感染したのか」がわからない理由
クラミジアが見つかったとき、「いつ、誰から感染したのか」を特定したくなるかもしれません。しかし実際には、感染時期を正確に特定することは困難です。
その理由は、女性を中心に自覚症状が乏しく、症状から感染の時期をさかのぼれないためです。過去の検査で陰性が確認された時点があれば、その後の期間に感染した可能性を考えやすくなりますが、陰性が確認された時点がない場合は、陽性が判明しても、感染時期や感染した相手を絞り込むことは困難です。
また、クラミジアには男女間でお互いに感染させるピンポン感染があります。一方だけが治療を受けても、もう一方が感染したままであれば再び感染し、感染が長く続くことになります。この繰り返しも、感染時期をわかりにくくする要因です。
感染時期や相手を特定しようとするよりも、今の状態を検査で確認し、パートナーとそろって治療を受けることのほうが、健康面では重要です。
検査を受けたほうがよいタイミング
クラミジアは症状で気づくことが難しいため、検査を受けるきっかけを自分でつくる必要があります。以下のいずれかに当てはまる場合は、検査を検討してください。
・パートナーがクラミジアと診断された
・新しいパートナーとの性的な接触があった
・コンドームを使わない性行為やオーラルセックスがあった
・妊娠を考えている
・最後に性感染症の検査を受けてから半年以上たっている
・おりものの変化、排尿時の違和感など、気になる症状がある
特に、症状がまったくない場合こそ検査の意味があります。症状が出るのを待っていると、その間に炎症が進んだり、パートナーへの感染が続いたりする可能性があるためです。
また、性器だけでなく、のどや肛門など心当たりのある部位もあわせて検査することが大切です。どの部位を検査すべきか迷う場合は、受診時に医師へ状況を伝えていただければ、必要な検査をご提案します。
症状がなくても検査を受けるべき理由については、下記のページも参考にしてください。
クラミジアの検査と治療
この章では、検査と治療について以下の2点に分けて解説します。
検査方法と受けられる時期
検査は、感染が疑われる部位に応じて検体を採取します。性器は尿または腟の分泌物、のどはうがい液、肛門は綿棒での拭い取りで調べます。のどの検査はうがい液を使用するため痛みはなく、肛門の検査も綿棒を数センチ入れるだけで、奥まで入れる必要はありません。
いだてんクリニックでは、通常検査としてPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行っています。結果を早く知りたい場合には、自費で受けられる即日検査(抗原検査)もあり、結果まで30分です。なお、即日検査は肛門には対応していません。
のどの淋菌・クラミジアは、感染から24時間ほどたてば検査が可能です。心当たりのある行為から1日以上たっていれば、検査を受けることができます。
治療とパートナーへの対応
クラミジアと診断された場合は、ドキシサイクリンやアジスロマイシンなどの内服薬で治療します。症状がなくても、検査で陽性であれば治療が必要です。
治療で大切なのは、パートナーも同時に検査・治療を受けることです。クラミジアには男女間でお互いに感染させるピンポン感染があるため、両者の治療を同時に行うことが重要とされています。片方だけが治療しても、再び感染し合う状態が続いてしまいます。
治療中の性行為の可否や、治療後の確認検査については、医師の指示に従ってください。
クラミジアの感染部位や治療については、下記のページも参考にしてください。
性感染症の検査内容や治療については、下記のページも参考にしてください。
まとめ
・クラミジアは自覚症状が乏しく、長期間気づかないまま経過することがある
・妊婦健診では正常妊婦の3〜5%に保有者がみられ、無症状の感染者は多いと推測されている
・女性は子宮頸管炎から骨盤内の炎症へ広がり、不妊や流早産の原因になることがある
・男性も症状が軽く、精巣上体炎やパートナーへの感染につながることがある
・のどや肛門の感染は症状が出にくく、性器の検査だけでは見逃すことがある
・症状がないときこそ検査に意味があり、パートナーとそろって治療することが大切
「何年も気づかなかった」という状況は、クラミジアでは決して珍しいことではありません。過ぎた時間を悔やむよりも、今の状態を確認し、必要な治療を受けることが、ご自身とパートナーを守ることにつながります。いだてんクリニックでは、性器・のど・肛門を含む複数の部位の検査に対応していますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
クラミジアに何年も気づかないことはありますか?
あります。クラミジアは自覚症状が乏しいことが多く、特に女性は子宮頸管炎を起こしていても症状を感じにくいとされています。妊婦健診や不妊の検査、パートナーの診断をきっかけに初めてわかる方もいます。症状がないことは、感染していないことの証明にはなりません。
症状がないのに治療は必要ですか?
はい、必要です。症状がなくても感染が続いていれば、体の奥へ炎症が広がったり、パートナーにうつしたりする可能性があります。検査で陽性が確認された場合は、症状の有無にかかわらず抗菌薬による治療を受けてください。
クラミジアは放置すると不妊になりますか?
必ず不妊になるわけではありませんが、女性では炎症が骨盤内へ広がることで卵管に影響が及び、不妊の原因になることがあります。不妊の検査をきっかけに過去の感染がわかるケースもあります。妊娠を考えている方は、早めに検査を受けておくと安心です。
いつ感染したのか知ることはできますか?
正確に特定することは困難です。過去の検査で陰性が確認された時点があれば、その後の期間に感染した可能性を考えやすくなりますが、陰性が確認された時点がない場合は、陽性が判明しても感染時期や感染した相手を絞り込むことは難しくなります。パートナー間でうつし合うピンポン感染が起きていることもあります。感染時期を突き止めるより、現在の状態を検査で確認し、二人そろって治療することが大切です。
性器の検査で陰性なら、のどや肛門も心配いりませんか?
そうとは限りません。クラミジアはオーラルセックスでのどに、アナルセックスで肛門や直腸に感染することがあり、これらの部位は症状が出にくいとされています。性器の検査だけでは見逃す可能性があるため、心当たりのある部位もあわせて検査することをおすすめします。
パートナーも検査を受けたほうがよいですか?
はい、おすすめします。クラミジアには男女間でうつし合うピンポン感染があり、片方だけが治療しても再び感染し合うことがあります。ご自身の治療と合わせて、パートナーにも検査・治療を受けていただくことが、再感染を防ぐうえで重要です。