性感染症について

性病は妊娠に影響する?不妊・妊娠中の感染・赤ちゃんへの影響を解説

「性病にかかったら、妊娠できなくなるの?」「妊娠中に性病が見つかったら、赤ちゃんにうつってしまう?」妊娠を考えている方や妊娠中の方にとって、性病と妊娠の関係は大きな不安のひとつではないでしょうか。

性病が妊娠に関わる場面は、「妊娠のしやすさへの影響」「妊娠中の感染」「赤ちゃんへの感染」の3つに分けて考えることができます。どれも病気によって影響の出方が異なり、感染したからといって必ず不妊になったり、必ず赤ちゃんにうつったりするわけではありません。

この記事では、性病と妊娠の関係を3つに分けて整理し、病気ごとの影響と、妊娠中の検査・治療、パートナーの検査・治療について解説します。

性病と妊娠の関係は3つに分けて考える

性病と妊娠の関係を説明する図

性病と妊娠の関係について調べると、「不妊」「流産」「母子感染」など、さまざまな言葉が出てきて不安になるかもしれません。まず知っておいていただきたいのは、これらは別々の話だということです。

1つ目は、妊娠のしやすさへの影響です。クラミジアや淋菌などを治療しないまま長く放置すると、炎症が子宮や卵管に広がり、妊娠しにくくなる原因になることがあります。

2つ目は、妊娠中に感染した場合の影響です。梅毒やクラミジアなどは、妊娠の経過に影響し、流産や早産などにつながることがあります。

3つ目は、赤ちゃんへの感染(母子感染)です。お母さんが感染していると、おなかの中や出産のときに、赤ちゃんに感染することがあります。

いずれも、早く見つけて適切に治療することで、影響を防いだりリスクを下げたりできることが大切なポイントです。いだてんクリニックにも「妊娠を考えているので検査しておきたい」というお問い合わせが寄せられます。不安な場合は、まず検査で今の状態を確認しましょう。

妊娠のしやすさへの影響

性病の中には、治療しないまま放置すると、妊娠のしやすさに影響するものがあります。この章では、代表的なものを2点に分けて解説します。

クラミジア

クラミジアは、女性では子宮頸管に感染し、自覚症状がほとんどないことが多い性感染症です。国立健康危機管理研究機構によると、女性では子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患を起こすものの自覚症状が乏しく、不妊や流早産の原因になるとされています。

ただし、感染した人が必ず不妊になるわけではありません。不妊につながるのは、主に治療されないまま炎症が卵管などに広がった場合です。自覚症状がなくても、検査で見つけて治療すれば、炎症が広がるのを防ぐことができます。

クラミジアのポイント

・気づかれにくい理由:女性は自覚症状がほとんどないことが多い

・放置した場合のリスク:炎症が子宮や卵管に広がり、不妊や流早産の原因になることがある

・対処法:検査で確認し、抗菌薬で治療する。パートナーも同時に治療する

男性でも、クラミジアは尿道炎や精巣上体炎を起こすことがあります。妊娠を考えているカップルは、どちらか一方だけでなく、二人で検査を受けることが大切です。

(出典:国立健康危機管理研究機構「性器クラミジア感染症」)

淋菌

淋菌もクラミジアと同じように、女性では子宮頸管に感染します。国立健康危機管理研究機構によると、女性は男性より症状が軽く、自覚されないまま経過することが多いため、炎症が上に広がって骨盤炎症性疾患や不妊症の原因となる場合があるとされています。

こちらも、感染すれば必ず不妊になるというものではありません。早く見つけて治療することで、炎症が広がるのを防ぐことができます。

淋菌のポイント

・気づかれにくい理由:女性は症状が軽く、自覚されないまま経過することが多い

・放置した場合のリスク:炎症が広がり、骨盤炎症性疾患や不妊症の原因となる場合がある

・対処法:検査で確認し、抗菌薬で治療する。パートナーへの検査もすすめる

クラミジアと淋菌は同じような経路で感染し、同時に感染していることも少なくありません。妊娠を考えている方は、あわせて検査しておくと安心です。

(出典:国立健康危機管理研究機構「淋菌感染症」)

クラミジアに長く気づかない理由と合併症については、下記のページも参考にしてください。

妊娠中に感染した場合の影響

妊娠中に性病にかかったり、妊娠前からの感染に気づかないまま妊娠したりした場合、妊娠の経過に影響することがあります。この章では、代表的なものを2点に分けて解説します。

梅毒

厚生労働省によると、妊娠している人が梅毒にかかると、流産や死産となったり、早産になったりすることがあります。梅毒は、感染しても痛みのないしこりや発疹が自然に消えるため、気づかないまま経過することがある病気です。

一方で、厚生労働省は、感染した妊婦への適切な抗菌薬治療によって、赤ちゃんに感染するリスクを下げることができるとしています。梅毒は血液検査で確認でき、妊娠中でも治療を検討できます。

(出典:厚生労働省「梅毒に関するQ&A」)

クラミジア

クラミジアも、妊娠中の感染が流早産の原因になることがあるとされています。妊娠中も自覚症状が乏しいことが多いため、症状だけで感染に気づくのは困難です。

国立健康危機管理研究機構は、母子感染を防ぐためには、妊婦の早期診断と治療が重要としています。妊娠中にクラミジアが見つかった場合も、妊娠中に使える薬を選んで治療を検討することができます。

妊娠中の感染は、お母さんの体や妊娠の経過への影響と、次の章で説明する赤ちゃんへの感染の両方に関わります。どちらも、早く見つけて治療することが大切です。

赤ちゃんへの感染(母子感染)

お母さんが性病に感染していると、おなかの中にいる間や出産のときに、赤ちゃんに感染することがあります。この章では、代表的なものを4点に分けて解説します。

梅毒

梅毒は、胎盤を通しておなかの中の赤ちゃんに感染することがあります。厚生労働省によると、胎児に感染すると死産、早産、新生児死亡が起こったり、生まれつき梅毒に感染した状態(先天梅毒)になったりすることがあります。

ただし、感染した妊婦が適切な抗菌薬治療を受けることで、母子感染のリスクを下げることができます。妊娠中に梅毒が見つかっても、必ず赤ちゃんに感染するわけではありません。早く見つけて治療を始めることが大切です。

クラミジア・淋菌

クラミジアや淋菌は、出産のときに産道を通じて赤ちゃんに感染することがあります。国立健康危機管理研究機構によると、妊婦がクラミジアに感染していると、新生児に肺炎や結膜炎を生じることがあり、淋菌も出産時に産道から新生児の目に感染することがあるとされています。

いずれも、妊娠中に検査で見つけて治療しておくことで、出産のときの感染を防ぐことにつながります。

(出典:国立健康危機管理研究機構「性器クラミジア感染症」)

(出典:国立健康危機管理研究機構「淋菌感染症」)

性器ヘルペス

国立健康危機管理研究機構によると、妊婦が性器ヘルペスを発症し、出産時に赤ちゃんが単純ヘルペスウイルスに感染した場合、新生児ヘルペスとなることがあります。

性器ヘルペスにかかったことがある方や、妊娠中に症状が出た方は、そのことを医師に伝えておくことが大切です。妊婦の早期診断と母子感染対策が有効とされており、状況に応じた対策が検討されます。

(出典:国立健康危機管理研究機構「性器ヘルペスウイルス感染症」)

HIV

HIVの主な感染経路には、性的接触や血液感染とともに、母子感染があります。国立健康危機管理研究機構によると、母子感染については、妊婦の早期診断と早期の治療開始、出産前後の母子感染対策が有効とされています。

HIVは、抗HIV薬による治療でウイルスの量を抑えることができます。妊娠中に感染がわかった場合も、早く治療を始め、対策をとることで、赤ちゃんへの感染を防ぐことにつながります。

(出典:国立健康危機管理研究機構「HIV感染症/AIDS(後天性免疫不全症候群)」)

妊娠中でも検査・治療を検討できる

「妊娠中だから、検査や治療は受けられないのでは」と心配する方もいるかもしれません。しかし、性病の多くは妊娠中でも検査を受けることができ、治療についても、妊娠中に使える薬を選んで検討することができます。この章では、妊娠中の検査・治療について2点に分けて解説します。

妊娠中の検査と治療

性病の検査は、血液検査や尿検査、腟の分泌物の検査、のどのうがい液の検査など、体への負担が少ない方法で行われます。妊娠中であっても、心当たりのある行為や症状に応じて検査を受けることができます。

治療については、病気の種類や妊娠の時期によって、使える薬や治療の進め方が変わります。妊娠中は使用を避ける薬もあるため、自己判断で薬を使うことは避け、必ず医師と相談したうえで治療を進めてください。

性病の検査を受ける際は、妊娠中であることと、妊婦健診を受けている医療機関があることを、医師にお伝えください。

治療薬や予防薬を相談するときは妊娠の可能性を伝える

妊娠している方や、妊娠の可能性がある方は、治療薬や予防薬について医師に相談するときに、必ずそのことを申し出てください。薬によっては、妊娠中や妊娠の可能性がある場合に、使い方を変えたり、別の薬を選んだりする必要があるためです。

薬の相談をするときに医師へ伝えてほしいこと

・妊娠している、または妊娠の可能性がある

・妊娠している場合は、妊娠週数

・授乳中である

・現在飲んでいる薬やサプリメント

・妊婦健診を受けている医療機関があるかどうか

HIV予防薬のPrEPは、妊娠中・授乳中も毎日服用する方法で使用できます。一方、Doxy-PEPは妊活中・妊娠中・授乳中の方には使用できません。妊娠の可能性がある場合は、服用前に医師にご相談ください。

(出典:米国国立衛生研究所「妊娠・授乳期のPrEPに関する診療指針」(2026年3月31日更新))

(出典:医薬品医療機器総合機構「ビブラマイシン錠50mg/100mg 電子添文」(2024年3月改訂))

HIVの感染前予防薬であるPrEPについては、下記のページも参考にしてください。

性病予防薬のドキシペップについては、下記のページも参考にしてください。

パートナーの検査・治療も大切

性病の検査や治療では、ご自身だけでなく、パートナーの検査・治療もあわせて考えることが大切です。

クラミジアや淋菌などは、パートナー間でお互いにうつし合うことがあります。ご自身が治療を受けても、パートナーが感染したままであれば、再び感染してしまいます。厚生労働省も、梅毒について、感染の可能性があるパートナーも検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要としています。

特に妊娠中は、治療後に再び感染すると、妊娠の経過や赤ちゃんへの影響が心配されます。パートナーにも検査を受けてもらい、感染していた場合は二人そろって治療を受けることが、お母さんと赤ちゃんを守ることにつながります。

パートナーに症状がなくても、感染していることがあります。男性は症状が軽いことも多いため、「症状がないから大丈夫」と考えず、検査で確認してください。治療が終わるまでは、性行為を控えることも大切です。

パートナーへの伝え方に悩む場合も、検査結果をもとに医師と相談しながら考えることができます。

(出典:厚生労働省「梅毒に関するQ&A」)

妊娠を考えている方・妊娠中の方の検査

妊娠を考えている方も、妊娠中の方も、次のような場合は検査を検討してください。

検査を検討したほうがよいとき

・妊娠を考えていて、これまで性病の検査を受けたことがない

・新しいパートナーとの性行為があった

・パートナーが性感染症と診断された

・おりものの変化、排尿時の違和感、できものなど、気になる症状がある

・コンドームを使わない性行為やオーラルセックスがあった

性病の多くは、症状がないまま経過することがあります。妊娠を考えている段階で検査を受けておけば、もし感染が見つかっても、治療を済ませたうえで妊娠に臨むことができます。

当院では、淋菌・クラミジアは感染の可能性がある行為から24時間以降、梅毒は4週間以降、HIVはHIV-RNA検査で2週間以降、第4世代抗原・抗体検査で4週間以降を検査時期の目安としています。検査時期が早すぎる場合は、適切な時期まで待って検査するか、医師の判断で再検査をご案内する場合があります。

症状がなくても検査を受けるべき理由については、下記のページも参考にしてください。

いだてんクリニックでの検査・ご相談

いだてんクリニックでは、性感染症の検査・治療に対応しています。性器・のど・肛門など複数の部位の検査や、梅毒・HIVなどの血液検査をまとめて受けることができます。

妊娠を考えている方や、妊娠中・妊娠の可能性がある方は、ご予約時や受診時にその旨をお知らせください。医師が状況をお聞きしたうえで、必要な検査や、治療・予防の進め方をご案内します。パートナーの方の検査についても、ご相談いただけます。

いだてんクリニックは大阪院・博多駅前院の2院で診療しています。大阪院は天満駅・扇町駅から、博多駅前院は博多駅からアクセスしやすい場所にあります。診療時間は院によって異なりますので、ご希望の院を選択して予約画面からご確認ください。

性感染症の検査内容や治療については、下記のページも参考にしてください。

検査ごとの費用については、下記のページも参考にしてください。

まとめ

重要なポイント

・性病と妊娠の関係は「妊娠のしやすさ」「妊娠中の感染」「赤ちゃんへの感染」の3つに分けて考える

・クラミジアや淋菌は、治療しないまま炎症が広がると不妊の原因になることがあるが、必ず不妊になるわけではない

・梅毒やクラミジアは、妊娠中の感染が流産や早産などにつながることがある

・梅毒・クラミジア・淋菌・性器ヘルペス・HIVは赤ちゃんに感染することがあるが、早期の診断と治療・対策でリスクを下げられる

・妊娠中でも検査を受けられ、治療も妊娠中に使える薬を選んで検討できる

・治療薬や予防薬を相談するときは、妊娠している・妊娠の可能性があることを必ず医師に伝える

・パートナーも検査・治療を受けることが大切

性病と妊娠の関係は不安に感じやすいテーマですが、早く見つけて適切に治療すれば、影響を防いだりリスクを下げたりすることができます。妊娠を考えている方も、妊娠中の方も、不安があればまずは検査で確認してみてはいかがでしょうか。いだてんクリニックでは、パートナーの方の検査も含めてご相談いただけます。

よくある質問

性病にかかったら妊娠できなくなりますか?

必ず妊娠できなくなるわけではありません。クラミジアや淋菌などを治療しないまま放置すると、炎症が子宮や卵管に広がり、不妊の原因になることがあります。早く見つけて治療すれば、炎症が広がるのを防ぐことができます。

妊娠中に性病が見つかったら、赤ちゃんに必ずうつりますか?

必ずうつるわけではありません。梅毒やクラミジア、淋菌、性器ヘルペス、HIVなどは赤ちゃんに感染することがありますが、妊娠中に見つけて治療や対策をとることで、リスクを下げることができます。医師と相談しながら進めてください。

妊娠中でも性病の治療は受けられますか?

病気の種類や妊娠の時期によって、使える薬や治療の進め方は変わりますが、妊娠中でも治療を検討することができます。妊娠中は使用を避ける薬もあるため、自己判断で薬を使わず、必ず妊娠中であることを伝えたうえで医師と相談してください。

妊娠中に性病検査を受けても大丈夫ですか?

性病の検査は、血液検査や尿検査、腟の分泌物の検査、うがい液の検査など、体への負担が少ない方法で行われます。受診の際は、妊娠中であることと妊娠週数、妊婦健診を受けている医療機関があることを医師に伝えてください。

パートナーも検査を受けたほうがよいですか?

はい、おすすめします。クラミジアや淋菌などはパートナー間でうつし合うことがあり、ご自身だけが治療しても再び感染してしまうことがあります。パートナーに症状がなくても感染していることがあるため、二人で検査を受け、必要に応じて一緒に治療を受けてください。

妊娠の可能性があるときに、予防薬を使うことはできますか?

はい。HIV予防薬のPrEPは、妊娠中・授乳中も毎日服用する方法で使用できます。妊娠を希望する場合や、PrEPの服用中に妊娠した場合も、医師と相談して開始・継続できます。一方、Doxy-PEPは妊活中・妊娠中・授乳中の方には使用できません。妊娠の可能性がある場合は、服用前に医師にご相談ください。