性病は自然治癒する?症状が消えても治らない理由
「症状が出ていたけれど、いつの間にか消えた」「もしかして自然に治ったのでは」そう考えて受診をためらっている方もいるのではないでしょうか。
しかし性感染症では、症状が消えることと、感染が治ることは別のことです。多くの性感染症は、治療をしなければ体内に病原体が残り続け、静かに進行したりパートナーにうつしたりすることがあります。
この記事では、なぜ症状だけで治ったと判断できないのか、疾患ごとの考え方と放置した場合のリスクを解説します。
「性病は自然に治る」は正しくない
性感染症は、自然に治るものではありません。症状が軽くなったり消えたりしても、それは病原体が体からいなくなったことを意味しません。
いだてんクリニックにも、「症状が出たが自然に治まったので受診しなかった」という方が、後になって検査で陽性とわかるケースがあります。症状が消えたときこそ受診をやめてしまいやすいため、注意が必要です。
症状が消えても治っていない3つの理由
なぜ症状が消えても治ったと判断できないのでしょうか。この章では、その理由について3点に分けて解説します。
症状そのものが自然に軽快する病気がある
代表的なのが梅毒です。梅毒では、感染部位にできるしこりや潰瘍も、その後に全身へ広がる発疹も、治療をしなくても自然に軽快します。しかしこれは治癒ではなく、体内では梅毒トレポネーマが生き続け、病気が進行していきます。
もともと症状が出ない期間がある
クラミジアや淋菌は、感染していても症状が出ない、あるいは非常に軽いことが多い性感染症です。特に女性のクラミジアは自覚症状に乏しく、感染に気づかないまま経過することが少なくありません。のどや肛門への感染も、通常は症状が出にくいとされています。
症状がない期間があるということは、「症状がないから治った」という判断ができないということでもあります。実際には感染が続いており、その間にパートナーへうつしたり、体の奥へ炎症が広がったりすることがあります。
体内にとどまり続ける病原体がある
性器ヘルペスのようなウイルス感染症では、症状が治まってもウイルスが神経節にひそみ、疲れや体調不良をきっかけに再発を繰り返します。HIVも、現在の医療でウイルスを体から完全に取り除くことはできないとされており、治療を続けることでウイルスの量を抑えます。
これらは「症状が出ていない状態」を保つことはできても、感染そのものがなくなったわけではありません。症状の有無だけで治癒を判断できない典型例といえます。
疾患別にみる「自然治癒」の考え方
性感染症といっても、経過は病気によって異なります。この章では、代表的な疾患について3点に分けて解説します。
梅毒
梅毒は、症状が自然に軽快したあと、症状のない潜伏期に入ります。その後、治療をしないまま長い年月が経過すると、ゴム腫や心血管梅毒、神経梅毒といった重い合併症を起こすことがあります。
自然に治るか:治らない。症状が消えても感染は続く
放置した場合のリスク:脳や心臓に重大な合併症、妊娠中は流産・死産・先天梅毒
対処法:血液検査で診断でき、早期であれば抗菌薬で完治が可能
厚生労働省も「梅毒は早期の適切な抗菌薬治療で完治が可能」とする一方、「検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります」としています。
梅毒の症状が気づかれにくい理由については、下記のページも参考にしてください。
クラミジア・淋菌
クラミジアと淋菌は細菌による感染症で、抗菌薬による治療が必要です。症状が軽くなっても細菌が残っていれば、感染は続きます。
自然に治るか:治療なしでの治癒は期待できない
放置した場合のリスク:女性は骨盤内炎症性疾患や不妊、男性は精巣上体炎など。母子感染で新生児に肺炎や結膜炎が起こることもある
対処法:検査で感染部位を確認し、抗菌薬で治療する
国立健康危機管理研究機構の資料では、女性のクラミジアについて、子宮頸管炎や骨盤内付属器炎、不妊などを起こすものの自覚症状の乏しい場合が多く、潜伏期間を特定することも難しいとされています。また、パートナー間でうつし合うピンポン感染があるため、両者が同時に治療することが重要とされています。
(出典:国立健康危機管理研究機構「性器クラミジア感染症(詳細版)」)
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、初めて感染したときの症状が強く出ても、数週間で自然に治まることがあります。しかしウイルスは体内に残り、再発を繰り返すことがあります。
自然に治るか:症状は落ち着くが、ウイルスは体内に残る
放置した場合のリスク:再発の繰り返し、症状がない時期のパートナーへの感染
対処法:抗ウイルス薬で症状を抑える。再発が多い場合は再発を抑える治療も選択肢になる
「治った」と思って受診しないままだと、再発のたびに対処が遅れることになります。
放置した場合に起こりうること
「症状が消えたから」と放置した場合、次のようなことが起こる可能性があります。
・体の奥へ炎症が広がり、不妊の原因になることがある
・梅毒では、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症が起こることがある
・症状がないまま、パートナーに感染させてしまうことがある
・妊娠中の感染では、流産・死産や、赤ちゃんへの感染が起こることがある
・治療が遅れるほど、治療期間が長くなることがある
厚生労働省は、性感染症について「早期の段階で治療しなければ、合併症や後遺障害が残る可能性があるものもある」として、早期発見・早期治療の重要性を示しています。
一方で、早い段階で見つかれば、多くの性感染症は治療によって治すこと、あるいは症状をコントロールすることができます。症状が消えたときこそ、放置せずに検査を受けていただきたいところです。
症状がなくても検査を受けるべき理由については、下記のページも参考にしてください。
「治った」と判断できるのはどんなときか
性感染症が治ったかどうかは、症状ではなく検査と医師の判断で決まります。判断の目安となるのは次のような点です。
適切な治療:検査で感染が確認され、その病気に対する適切な治療を受けた
処方された薬:処方された薬を、指示された期間しっかり飲み切った
治療後の確認:必要に応じて、治療後の確認検査で陰性が確認された
パートナーの検査・治療:パートナーも検査・治療を受け、うつし合う状態が解消されている
特に大切なのが、自己判断で治療をやめないことです。
また、原因を確認しないまま自己判断で市販薬を使用することはおすすめしません。病気によって必要な薬は異なり、合わない薬を使うと症状だけが変化して、かえって診断が難しくなることがあります。まずは医療機関で原因を確認したうえで、適切な治療を受けることが大切です。
いだてんクリニックでの検査・治療
いだてんクリニックでは、性感染症の検査・治療に対応しています。「症状が消えたけれど不安が残っている」という状態でも受診いただけます。医師が心当たりのある行為や経過を確認し、必要な検査をご提案しますので、「何を検査すればいいかわからない」という段階でも問題ありません。
性感染症の検査内容や治療については、下記のページも参考にしてください。
検査ごとの費用については、下記のページも参考にしてください。
まとめ
・性感染症の多くは、自然に治ることを期待できない
・症状が消えることと、感染が治ることはまったく別のこと
・梅毒は症状が自然に軽快するが、体内では病気が進行していく
・クラミジアや淋菌は、もともと症状が乏しく気づきにくい
・ヘルペスやHIVは、症状が治まってもウイルスが体内に残る
・治ったかどうかは症状ではなく、検査と医師の判断で決まる
症状が消えると受診の必要性を感じにくくなりますが、感染が続いていれば、時間がたつほど体への影響やパートナーへの感染リスクは大きくなります。心当たりがある場合は、症状の有無にかかわらず一度検査を受けてみてはいかがでしょうか。いだてんクリニックでは、複数の部位・項目の検査に対応しています。
よくある質問
性病が自然に治ることはありますか?
性感染症の多くは、自然に治ることを期待できません。症状が軽くなったり消えたりすることはありますが、体内に病原体が残っていれば感染は続きます。尖圭コンジローマのように一部が自然に消えることがある病気もありますが、例外的なもので、診断を受けたうえで経過をみることが必要です。
症状が消えたのに、なぜ受診が必要なのですか?
症状が消えても感染が続いていることがあり、その間にパートナーへうつしたり、体の奥へ炎症が広がったりすることがあるためです。梅毒のように、症状が自然に軽快したあとに病気が進行していく病気もあります。症状の消失は治癒の証拠にはならないため、検査で確認することが大切です。
クラミジアは放置していたら治りますか?
治療をしないまま治ることは期待できません。特に女性は自覚症状が乏しく、気づかないうちに骨盤内炎症性疾患や不妊の原因になることがあります。パートナーとうつし合うこともあるため、感染が確認された場合は、二人そろって治療を受けることが重要です。
市販薬で性病を治すことはできますか?
原因を確認しないまま市販薬を使うことはおすすめしません。性感染症は原因となる病原体によって必要な薬が異なり、合わない薬では効果が期待できないうえ、症状だけが変化して診断が難しくなることもあります。まずは医療機関で原因を確認したうえで、適切な治療を受けてください。
薬を飲んで症状が消えたら、途中でやめてもよいですか?
自己判断で中断しないでください。症状が消えても体内に病原体が残っていることがあり、中途半端な治療は再発や治りにくさにつながります。
治ったかどうかはどうやって確認しますか?
病気や治療内容によって異なりますが、治療後に確認検査を行って判断する場合があります。検査を受けるタイミングは病気ごとに目安が異なるため、医師の指示に従ってください。パートナーの治療が済んでいるかどうかも、再感染を防ぐうえで大切な確認事項です。