症状だけでは性感染症は判断できない!~半数以上の感染者に症状がでないトリコモナス症について~
トリコモナス症は、腟トリコモナスという原虫によって引き起こされる感染症です。
陰部の痛みや泡立ったおりものがでることが特徴的な症状ですが、無症状の場合も少なくありません。
ここでは、トリコモナス症の原因や検査方法、治療についてまとめて解説します。
この記事で言いたいこと
・トリコモナス症に感染している人の半数以上は症状がでない。
・およそ30分で検査、診断、治療薬の処方が可能である。
・内服薬・膣錠で治療が可能である。
・パートナーとの同時治療が非常に重要である。
おりものの異常は、細菌性腟炎やカンジダの可能性もあります。下記のブログで詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
おりもののサインや、受診すべきタイミングは下記のブログで詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
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トリコモナス症とは
「泡立ったおりものが出る」「陰部が痛い」「おりものの増加」…これらの症状はトリコモナス症かもしれません。
トリコモナス症(トリコモナス腟炎)は、腟トリコモナスという原虫によって引き起こされる感染症です。
感染により上記のような症状がでることがありますが、感染者の50~70%は無症状といわれています。
無症状であっても治療をしていない場合、低出生体重児、早産、早期破水といった出産時のトラブルや不妊につながります。
また、細菌性腟症の発症や他の性感染症のリスクが上がるといわれており、HIVの感染リスクについては1.5倍も増加するといわれています。
トリコモナス症の原因
主な感染の原因は、感染者との性行為です。
ある研究では、トリコモナス症に感染している女性とその男性パートナーの感染率を調査したところ71.7%の男性パートナーにトリコモナス症の感染が見つかり、そのうち77.3%は無症状であったとの報告があります。
つまり、男女ともに無症状であるがゆえに感染に気付かない、また感染力が強く約7割の確率でパートナーに感染するということです。
トリコモナス症の検査
おりもの(腟)を綿棒で拭っていただいたのちに、顕微鏡で観察し診断を行います。
おりものはご自身で採っていただくため、陰部の診察や痛みを伴うことはありません。
当院では検査~診断まで30分程度で可能です。
・細菌性腟症、カンジダ、トリコモナス症の診断が可能な検査で、すべて即日で結果がわかります。
・検査方法:拭っていただいたおりものをその場で特殊な染色を行い、顕微鏡で観察します。
・検査可能時期:性行為の有無にかかわらずいつでも可能です。 生理の場合は経血が多い日を避けていただくとより正確な検査結果が出ます。
・検査結果:即日
・費用:4,500円*(税込)
・おりもの検査は、必ず医師からの説明となりますので、別途診察料**がかかります。
*25歳以下の学生様の場合、割引がございますので学生証をご持参ください。
**初診料は2,500円、再診料は1,000円となります(いずれも税込)。
トリコモナス症の治療
治療は内服薬(飲み薬)を10日間1日2回内服します。 膣錠(膣の中に入れる薬)を内服薬と併用で処方することがあり、10日間1日1回使用します。
トリコモナス症は自然に治ることがないため、必ず治療が必要です。
トリコモナス症であった場合には、当日お薬をクリニックでお渡しします。そのため薬局にお薬を取りに行く必要はございません。
・治療期間:10日間
・費用:
膣錠:10日間6,000円*(税込)
内服薬:10日間6,000円*(税込)
*25歳以下の学生様の場合、割引がございますので学生証をご持参ください。
パートナーの治療
トリコモナス症は性行為により感染します。自分は治療をしてもパートナーが治療していない場合、再度感染してしまう可能性があります。
アメリカ疾病予防管理センターのガイドラインでは「再感染を防ぐためには、すべてのセックス・パートナーに対する同時治療が不可欠である。」と記載されています。
つまり、トリコモナス症の診断を受けた場合にはパートナーも一緒に治療を受けることが推奨されています。
男性のパートナーの場合、尿で検査をするのが一般的です。しかし、トリコモナス症の尿検査の感度(検査の正確性)は高くなく、感染していても検出されないことがあります。
そのため、当院では尿検査を実施しておりません。男性のパートナーの場合は、検査を実施せずに治療を行っております。
パートナーと同時に治療することが可能となりますので、ご希望がある方は診察の際に医師にお申し付けください。
女性のパートナーの場合、同じおりもの検査を受けていただく事が可能です。また、パートナーと同時に治療をすることも可能です。
検査や治療の相談も可能ですので、悩まれている際は一度診察を受けていただければと思います。
<医師 塩尻 大輔> パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。 日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。 当院でも非常勤医師として診療いただいております。