淋病(淋菌感染症)について~のどや肛門にも感染します!~
淋病(淋菌感染症)は、クラミジア等と並んで感染者が非常に多い性感染症です。
淋病は、性器だけでなく、咽頭(のど)や肛門にも感染することが知られており、特に咽頭や肛門の感染は無症状の方が多いことも特徴です。
ここでは、淋病の特徴や症状、治療、予防の方法についてまとめて解説します。
この記事で言いたいこと
・淋病(淋菌感染症)は、性器・のど・肛門に感染し、治療するまでは治ることはない。
・淋病は、性器に感染した場合、男性は比較的症状が強いことが多いが、のどや肛門は無症状のことが多く、検査をしなければ診断ができない。
・女性は無症状の人が多いが、放置すると卵管炎等、妊娠中だと流産等の原因になりうる。男性も、男性不妊症の原因になるため、ブライダルチェックなどでは必ず検査が必要である。
・淋病は感染者との1回の性行為で、30~40%の確率で陽性になり、感染しても免疫はつかず再感染してしまう。
・治療後は必ず確認検査を行い、治癒を確認する必要がある。
・近年淋病はDoxy PEPや淋菌ワクチンで予防ができることが知られており、感染する前に予防することが重要である。
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淋病は非常に感染者数の多い性感染症
淋病(淋菌感染症)は、クラミジア感染症と並んで感染者数の多い性感染症です。
Neisseria gonorrhoeae (gonococci)という菌が粘膜に付着することで感染しますが、性器だけでなく咽頭(のど)や肛門にも感染することはあまり知られていません。
特に咽頭や肛門の感染は無症状であることが多く、近年の研究では、咽頭や肛門の陽性率が高いことから検査を行うことの重要性が指摘されています。
淋病は、感染者との性行為を行った場合、1回で30~40%の確率で感染すると言われています。
残念ながら、日本での罹患率は近年増加傾向にあり、淋菌感染症が増加傾向にあるのは先進国の中で日本だけであると報告されています。
淋病の症状
淋病の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は2日~7日程度です。
自然治癒することはなく、主な症状は次の通りです。
男性器の症状
・排尿時痛(おしっこをする時に痛む)
・尿道口から膿がでる
歩けなくなるほどの痛みを伴うこともありますが、膿も出ず無症状という方もいて、症状の出方は人によって差があることに注意が必要です。
放置すると症状が悪化し、精巣上体炎や男性不妊症などの原因になることもあります。
検査の方法:初尿(出始めの尿)を少量採取し、検査を行います。
女性器の症状
・おりものの量が増える
・おりものの臭いや色が普段と違う
・頻尿、排尿痛
感染者の80%が無症状で気付かないことが多いです。
放置すると卵管炎や腹膜炎、妊娠中だと流産や早産、破水の原因になることもあり、淋病は不妊の原因になることに注意が必要です。
特に、淋菌に感染したまま出産すると赤ちゃんに感染することもあるので、必ずブライダルチェックなどを受けましょう。
検査の方法:膣ぬぐいの検査を行います(ご自身でぬぐうことができ、痛みはありません)。
のどの症状(男女共通)
・のどの腫れ、痛み
・発熱など
症状が出ない人が多く、症状がなくてもオーラル行為(キスやフェラ、クンニなど)により他人に感染する可能性があります。
検査の方法:うがいの検査を行います。
肛門の症状(男女共通)
・肛門のかゆみ、不快感
・下痢、血便など
症状が出ない人が多く、症状がなくてもリミング(肛門をなめる、なめられる)や肛門性交があれば感染している可能性があります。
検査の方法:肛門ぬぐいの検査を行います(ご自身でぬぐうことができ、痛みはありません)。
淋病の検査
通常は、検査精度の高いPCR検査を行います。結果が出るのは2~3日後(土日祝を除いた営業日換算)です。
早く調べたい場合は即日検査も可能ですが、精度は若干落ちます。
淋病の検査は、保険診療の場合、症状がある、かつ、通常検査(即日は不可)、かつ、1部位(性器または咽頭)のみという決まりがあります。(肛門検査や同時検査は行うことができません)
上述の通り、淋病は性行為を行っている誰もが性器や咽頭、肛門に感染している可能性があり、同時に複数部位を調べることがご自身の身を守る上で重要です。
内容:遺伝子を増幅して調べるため感度が高い検査であり、より正確に調べたい方におすすめです。
検査内容:
淋病(性器・のど・肛門のうち1か所)4,500円(税込)
淋病(性器・のど・肛門のうち2か所)8,500円(税込)
淋病(性器+のど+直腸)12,500円(税込)
検査時期:感染機会の24時間後から検査可能です。
検査結果:2-3日後(土日祝を除いた営業日換算)
内容:検査したその日に、淋病の感染有無が確認できます。感度はPCR法に比べて低くなります。
検査内容:淋病(性器・のどのうち1か所)7,000円(税込)
検査時期:感染機会の24時間後から検査可能です。
検査結果:30分前後
淋病に感染している方のうち、20%もの人がクラミジアに同時感染していることが知られており、性感染症ガイドラインでは症状のある方に対して、クラミジアの検査も必ず行うよう明記されています。
当院では、クラミジアの検査も同時に行うことによって、単体検査よりも安価に検査をすることができます。
内容:遺伝子を増幅して調べるため感度が高い検査であり、より正確に調べたい方におすすめです。
検査内容:
淋病+クラミジア(性器・のど・肛門のうち1か所)8,000円(税込)
淋病+クラミジア(性器・のど・肛門のうち2か所)15,000円(税込)
淋病+クラミジア(性器+のど+直腸)20,000円(税込)
検査時期:感染機会の24時間後から検査可能です。
検査結果:2-3日後(土日祝を除いた営業日換算)
内容:検査したその日に、淋病の感染有無が確認できます。感度はPCR法に比べて低くなります。
検査内容:
淋病+クラミジア(性器・のどのうち1か所)12,000円(税込)
淋病+クラミジア(性器+のど)21,000円(税込)
検査時期:感染機会の24時間後から検査可能です。
検査結果:30分前後
当院では、複数の検査を行うことでさらにお得になるセットメニューのご用意もありますので、診察時にスタッフにお尋ねください。
淋病の治療
淋病は感染率の高い病気であるため、パートナーにも感染していることが非常に多いです。
パートナーと同時に治療されることをおすすめします。同時に治療しないと、パートナーから再感染する可能性があるからです。
また、性器・咽頭・肛門のいずれかのみの検査を受けていた場合、ご自身が知らない間に検査を行っていない部位から相手に移している可能性があるため注意が必要です。
治療としては、抗生剤の点滴、または筋肉注射を使用しますが、筋肉注射は咽頭の淋病に対して効果が乏しいことが知られており、抗生剤の点滴を行うのが一般的です。
また、内服薬による治療は、淋菌の耐性化が進んでいることから第一選択薬として、点滴が推奨されています。
必要時間は15分程度、通常は1回のみで治療は終了となります。
治療自体は当日終了しますが、治療後2週間以降に再度確認検査を受けていただき、陰性の確認を必ず行う必要があります。
点滴:7,000円(税込)
筋肉注射:9,000円(税込)
淋病に感染している人は、クラミジアに同時感染していることが多いため、海外のガイドラインでは、淋病の治療の際に同時にクラミジアの治療を行うことも推奨されています。
治療をご希望の場合は、医師にお気軽にご相談ください。
治療後は確認検査が必要
性感染症の治療には、必ず治癒確認検査が必要です。薬を正しく服用できなかったり、耐性菌による治療失敗例が存在することが知られており、しっかりと治癒を確認する必要があるのです。
完治しないまま放置すると、症状が再発したり他人に感染させてしまう可能性があるため、治療後2週間経ってから治癒確認のため改めて検査を受けることが非常に重要です。
確認検査で治癒が確認できるまでは、性行為は控えましょう。性行為を行ってしまうと、新たに感染してしまったのか、治療失敗なのかの区別がつかなくなってしまいます。
当院では治癒確認検査を気軽に受けていただけるように割引価格を設定しております。
当院で治療後3ヶ月以内に治癒確認検査を受ける場合、検査料を1,000円引きさせて頂きますので、ぜひご利用ください(診察不要であれば、検査代金のみで受診が可能です)。
淋病は予防ができます!
淋病は、菌が存在する場所(膣、尿道、咽頭、肛門など)から、性行為によって粘膜へ接触することにより感染します。
そのため、コンドームを着用することで、性行為(オーラル行為等を含む)時に粘膜接触を避ければ、感染のリスクを大きく低減させることができます。
近年、梅毒・淋菌・クラミジアは飲み薬であるドキシペップを使うことで、予防が可能であることがわかっており、淋菌についてはワクチンについても効果があると報告があります。
五大性病である、HIV・B型肝炎・梅毒・淋菌・クラミジアはいずれも次のように予防できる時代となっており、当院ではそのすべての治療や検査、予防を行うことが可能です。
【ドキシペップとは】
性行為後72時間以内にドキシサイクリン(ビブラマイシン)を200mg内服することにより、梅毒、淋病、クラミジアを予防する方法です。
予防効果は、梅毒は87%、クラミジアは88%、淋病は55%と発表されました(2022年7月の国際エイズ学会)。
これらの性感染症は、陽性の方と性行為を行うと梅毒は30%程度、クラミジアや淋病は最大で50%程度感染すると言われており、きわめて高い予防率と言え、世界的に注目されています。
当院では、ドキシペップに関して、医師の診察のもと、リスクとベネフィットについて十分に説明を行い、患者様ごとに適応を検討致します。詳しくは医師の診察でお聞きください。
こんな人におすすめ
・以前に淋病や他の性感染症にかかったことのある方
・性行為を定期的に行っており、淋病や他の性感染症を予防したい方
・複数のセックスパートナーがいる方
・CSW(風俗業界、AV業界等で働く方)の方など、特に感染機会の多い方
当院では、エイズ治療研究開発センター(ACC)、当院提携クリニックであるパーソナルヘルスクリニック(東京)の協力のもと、性感染症に罹患するリスクの高い患者様に対して、ドキシペップを処方しております。
これらの情報を蓄積し、日本におけるドキシペップの有効性を検証し、新たな予防医療の形を構築、社会へ還元できる取り組みを行っております。
【淋菌ワクチンとは】
髄膜炎菌B型ワクチンは髄膜炎(脳や脊髄をおおう膜に炎症が起きる病気)を予防するワクチンとして使用されていました。
髄膜炎菌B型と淋菌は莢膜という細胞の外側にある膜状の構造物が似ており、淋病の予防ワクチンとして利用できる可能性が考えられていました。
2004年頃から開発の動きが進み、近年フランスの研究チームにより、髄膜炎菌B型ワクチンにより淋病を51%予防できると報告しました。
当院ではドキシペップとワクチンをそれぞれ単独で使用するのではなく、併用することで今まで予防が難しかった淋菌に対して、より高い予防効果が得られると考えています。
淋病の治療薬にアレルギーがある方は、淋病に感染すると治療が難しく、ワクチンによる予防が大切です。
こんな人におすすめ
・以前に淋病や他の性感染症にかかったことのある方
・淋病治療の第一選択薬(セフトリアキソン)にアレルギーのある方
・複数のセックスパートナーがいる方
・CSW(風俗業界、AV業界等で働く方)の方など、特に感染機会の多い方
料金は、下記の通りです。2回接種により、淋病の予防効果が期待できます。
費用:1回あたり26,000円(税込)
接種回数:2回
スケジュール:初回、1ヶ月後
ドキシペップと併用することで、淋菌に対してより高い予防効果が得られると考えられています。
<医師 塩尻 大輔> パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。 日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。 当院でも非常勤医師として診療いただいております。