海外渡航前の予防接種を受けられる方へー持ち物・接種間隔・当日の注意点ー
海外旅行、留学、出張、赴任などを予定していると、「ワクチンは必要なの?」「何を持って受診すればいいの?」「黄熱ワクチンはどこでも受けられるの?」と迷う方が少なくありません。
特に、渡航前のワクチンは、行き先だけでなく、滞在期間、現地での過ごし方、動物との接触の有無、医療体制などによって必要な種類が変わります。早めに準備しておくことで、接種スケジュールの選択肢が広がります。
この記事では、予防接種を受ける前に知っておきたい持ち物や注意点、生ワクチンと不活化ワクチンの違い、接種間隔の考え方、輸入ワクチンの特徴、黄熱ワクチンの受け方、そして当院で接種可能なワクチンをわかりやすくまとめます。
この記事で言いたいこと
・予防接種は「必要なワクチンを、適切な間隔で、体調のよい日に受けること」が大切です。母子手帳や接種記録を持参して早めに相談することで、出発までの限られた時間でも無理のない計画を立てやすくなります。
・海外渡航で必要になるワクチンは一人ひとり異なり、渡航先や滞在内容に応じて検討します。
・黄熱ワクチンのように限られた医療機関でしか受けられないワクチンがあります。
・ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがあり、種類によって接種間隔や接種回数の考え方が異なります。
目次の各項目をクリックすると、記事の途中までジャンプすることができます。
予防接種を受ける方へ
ワクチンは、海外でかかるおそれのある感染症を予防するための大切な手段です。渡航先によって注意すべき感染症は異なり、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎など、地域や滞在内容に応じて接種を検討します。
受診前に準備をお願いしたい持ち物
・母子手帳
・これまでのワクチン接種記録
・渡航先、出発日、滞在期間の確認
・お薬手帳
・診断書や所定の接種記録(必要な場合)
特に母子手帳や接種記録があると、麻しん、風しん、水痘、日本脳炎など、過去の接種歴がわかり、追加接種が必要かどうかを判断しやすくなります。
当日の体調も重要です。明らかな発熱がある場合や、強い体調不良がある場合は、接種の延期が必要です。
ご家族で同じ時期に渡航する場合は、家族で接種計画を立てることをおすすめしています。お子さんだけでなく、大人も母子手帳や接種歴を確認しながら相談すると、必要なワクチンの抜け漏れを減らしやすくなります。
領収書や接種証明書が必要な場合は、受診時に医療者に相談ください。指定書式や提出期限がある場合は、その旨もお伝えください。
生ワクチンと不活化ワクチンの違い
ワクチンには大きく分けて生ワクチン(弱毒生ワクチン)と不活化ワクチンの2種類があります。それぞれ異なる特徴があるため、接種する際にはその特徴を理解しておくことが大切です。
生ワクチン
生ワクチンは、病原体の病原性を弱めてつくったワクチンです。「生きた」病原体を含んでおり体内で増殖することで、自然感染に近い免疫を誘導します。そのため1回または2回の摂取で強い免疫を獲得でき、長期にわたる予防効果が期待できます。
例)MMR(麻しん・風しん・おたふく)ワクチン、水痘ワクチン、黄熱ワクチン(当院では接種できません)
不活化ワクチン
不活化ワクチンは、病原体を殺した(不活化した)ものや、その一部(タンパク質や毒素)を利用して作られたワクチンです。体内で増殖しないため、安全性が高く、免疫不全者でも接種が可能です。しかし、十分な免疫を得るために複数回接種が必要になることがあります。
例)A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎、腸チフスなど生ワクチン以外
生ワクチンの接種時期と間隔
ワクチンは、種類によって同時接種できるものと、間隔をあけたほうがよいものがあります。特に注射の生ワクチンどうしを別の日に接種する場合は、原則として4週間程度あけることが重要です。黄熱ワクチンについても、直近4週間以内に他の生ワクチンを受けている方は接種ができません。
そのため、出発直前に「いろいろ受けたい」と考えても、希望通りに組めないことがあります。
渡航前ワクチンは、行き先が決まったら早めに相談することがとても大切です。特に黄熱ワクチンや複数回接種が必要なワクチンが候補に入る場合は、出発の1~2か月以上前から考えておくことをお勧めします。
国産ワクチンと輸入ワクチンの違い
トラベル外来では、日本で一般的に使われている国産ワクチンだけでなく、輸入ワクチンを使用することがあります。
これは、渡航前の限られた時間の中で、より効率よく予防接種を進められる場合があるためです。当院でも、有効性・安全性が確認されているワクチンを国内外問わず採用し、渡航先や出発までの日数に応じて提案しています。
輸入ワクチンのメリット
・短期間で免疫をつけやすいものがある
・複数の感染症をまとめて予防できるものがある
・価格面でメリットのあるものがある
・国内生産のないワクチンもある
出発まであまり時間がない方や、できるだけ効率よく接種を進めたい方にとって、輸入ワクチンは有力な選択肢になります。
一方で、国産ワクチンは、日本国内で承認されており、重篤な副反応が起こった場合に公的な補償制度の対象となる点が特徴です。
ワクチンによって、接種回数、免疫がつくまでの速さ、予防できる感染症の範囲、費用、補償制度は異なります。そのため、どちらが一律に良いということではなく、渡航先、これまでの接種歴、出発までの日数をふまえて、医師と相談しながら選ぶことが大切です。
補償制度について
当院で取り扱う輸入ワクチンには、日本国内で未承認のものも含まれますが、海外において十分な接種実績があり、有効性・安全性に関する知見が確認されているものを採用しています。
なお、未承認ワクチンについても、重篤な副作用が生じた場合に備え、輸入業者による副作用被害者補償制度および当院加入の保険による補償体制を整えています。
特定の医療機関でのみ受けられるワクチン
アフリカや南米の流行地域への渡航・入国に必須の生ワクチンである黄熱ワクチンはどこの医療機関でも受けられるわけではなく限られた医療機関のみとなります。
その為、黄熱ワクチンが必要かどうかはなるべく早く確認するようにしましょう。
黄熱ワクチンが必要になる場合
・黄熱流行地域に入る
・入国時に黄熱予防接種国際証明書の提示を求められる国に行く
・経由地の条件によって証明書が必要になる
など
黄熱予防接種国際証明書は、現在、接種10日後から生涯有効とされています。出発直前では条件を満たせないことがあるため、黄熱ワクチンが必要かもしれない場合は、特に早めの確認がお勧めです。
接種当日の注意事項
接種当日は、普段どおりの食事で問題ないことが多いですが、空腹や脱水、寝不足は体調不良の原因になりやすいため、無理のない状態で来院をお願いします。
受診当日に発熱がある場合や、強い咳、嘔吐、下痢などがある場合は、受診日の変更をオススメします。
接種後は、まれにアレルギー反応が起こることがあるため、接種直後に強い息苦しさ、蕁麻疹、気分不良などがあれば医療機関に受診してください。
今までワクチン接種後にアレルギー反応が起きたことがある、倒れたことあるなどの方は診察時にお申し付けください。
一般的なワクチンの副作用、接種部位の痛み、赤み、軽い発熱などです。接種当日は、激しい運動を避ける、接種部位を強くこすらない、当日の長風呂は避けるといった点を意識すると安心です。
当院で接種可能なワクチン
トラベル外来は自費診療のみとなります。初診料は2,500円、再診料は1,000円で、2回目以降診察の希望が無くワクチン接種のみの場合再診料不要です。
当院で取り扱っている主なワクチンの費用は、下記をご参照ください。
また、各種証明書が作成が可能です。渡航先や提出先にあわせて必要になることがあるため、必要な方は受診時に相談してください。
| 内容 | 費用(税込) |
|---|---|
| 各種証明書 (日本語) | 3,300円 |
| 各種証明書 (英語) | 5,500円 |
※証明書の発行には1週間程度時間を頂戴しております。ご希望の場合はお早目にご相談ください。
予約
予防薬の処方や予防接種は予約なしでも接種が可能です。
予約の方を優先にご案内しておりますので、予定が決まっている場合は下記よりご予約をお願いいたします。
<医師 忽那 賢志>感染症内科専門医、医学博士。 日本最大のトラベルクリニックを擁する国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)にて、約10年間渡航医学・輸入感染症診療に携わり、現在も診療・研究などを行っておられます。 他の専門領域は新興再興感染症、新型コロナウイルス感染症で、メディアやインターネットなど様々な媒体で感染症の啓発に取り組んでおられます。 当院でも非常勤医師として診療いただいている他、トラベル外来の監修も行っていただいております。
