性感染症について

梅毒に感染しても気づかない?心配な時はどうしたらいいの?

梅毒に感染しても気づかない?心配な時はどうしたらいいの?

梅毒は、「トレポネーマ」という細菌が起こす病気です。性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)等の性行為が感染の原因となります。

もともと国内では年間500件ほどの報告がありましたが、2010年頃から急激に増え始め、2022年には1万件を超え、今もなお感染が広がっています。

この記事では、梅毒の症状や検査、治療などをわかりやすくまとめています。

▶梅毒の検査・診断・治療について簡単にまとめたブログもご覧ください。

この記事で言いたいこと

・梅毒は、近年非常に増加している。

・梅毒は、無症状のことが多く症状も多彩なので、検査をしないと感染しているかどうかはわからない。気づかないうちに、他人を感染させてしまう可能性もある。

・感染機会から6週間経過すれば、即日検査・通常検査いずれも受けることができる。

・治療方法は確立しており、当院で速やかに治療が可能である。

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梅毒は増えている

梅毒は近年増加していますが、具体的に近年の増加はどの程度のものなのでしょうか。

梅毒は下の図のように、2021年から急速に増加傾向にあります。男性は20-50代に幅広く報告されており、女性は20代で突出して報告数が多いことがわかります。また、10代の方の感染も無視できない状況です。

大阪では、2022年10月の報告数は1,337例でした。これは、感染症発生動向調査の全数把握感染症に定められた1999年以降、年間報告数として最多であった2018年の1,188例を第38週時点で超えており、感染報告数が非常に増えていることがわかります。

感染が急速に広がった原因の1つとして梅毒の発見が遅いことにあると考えられます。

感染の発見が遅くなる理由として、そもそも症状に気づかない、感染から症状がでるまでに時間がかかるなどがあります。

梅毒の症状に気づけないのはなぜ?

梅毒は4期に分類されています。

現在では、梅毒は治療可能な病気です。第3期、第4期に進行している例はほとんどみません。今回は第1期と第2期についてお話します。

梅毒第1期

約3割の患者に感染から3週間程度で陰部(侵入部位)にしこりができます。

しこりはすぐ消えますが、まれに潰瘍となることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることがあります。

潰瘍ができても、リンパ節がはれても痛みはありません。症状が出現しても無自覚がほとんどでありパートナー・不特定多数との性行為に至ってしまいます。

梅毒第2期

感染後、3か月から3年の状態で、全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる場合があります。

「バラしん」と呼ばれる特徴的な全身性発しんが現れることがあり、赤い目立つ発しんが手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れます。 治療しなくても約1か月程度で消失しますが、治療しない限りトレポネーマは体内に残っています

発見しやすい特徴的な所見が出現したときには、すでに感染から3か月程度は経過しており、この間にパートナー、もしくは不特定多数の方に感染を広げてしまうということになります。

梅毒はどうやって感染がわかるの?

梅毒は感染後すぐには陽性反応が出ないことがあります。感染機会から6週間経過してから検査を受けるようにしてください。

梅毒の検査方法には、即日検査と通常検査があります。

当院では、当日に結果がわかる即日検査・すでに感染したことのある方でも現在の感染状況がわかる通常検査のいずれも受けていただくことができます。

即日検査

費用:7,000円(税込)

検査可能時期:感染機会から4時間以降

検査の方法:採血

検査結果:30分後(院内でご説明)

備考:過去に梅毒に感染経験のある方は受けられません。

通常採血(RPR・TP検査)

費用:5,000円(税込)

検査可能時期:感染機会から4週間以降

検査の方法:採血

検査結果:4~5営業日後(メールで確認)

備考:過去に梅毒に感染経験のある方も受けられます。

梅毒の結果の解釈

梅毒の通常検査(RPR・TP検査)では、2つの検査を行い、その結果をもとに病期の推定や治療の判断を行います。

RPRは梅毒に感染したことでできる抗体(梅毒の活動性)を検査する方法です。一方、TP検査は梅毒そのものに対する抗体を検出します。

結果の見方は大きく分けて次のとおりとなります。

RPRTPHA結果の解釈
陰性陰性梅毒陰性*
陽性陰性生物学的偽陽性*
陽性陽性梅毒陽性または治療後の抗体保有者*
陰性陽性梅毒治療後の抗体保有者**

*まれに感染初期 **まれにTP抗原系偽陽性

迅速検査ではTP法で検査しており、過去に罹患していると陽性が続くため、梅毒に感染したことがある方はこれだけでは「現在感染しているか」の判断できません。梅毒に感染したことのある方は、必ず通常検査を受けましょう

結果は陰性・陽性だけではなく、数値も見ながら判断するため、結果の解釈の仕方が分からない場合は医師にご相談ください。

梅毒はどうやって治すの?

現在では、梅毒は発見が遅れなければ比較的に簡単に治療ができる病気です。

梅毒にはペニシリン系などの抗菌薬が有効です。国内では、抗菌薬の内服治療が一般的に行われてきました。

2021年9月に、梅毒の世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤が国内で製造販売を認められました。

内服治療の場合、内服期間は病期などを考慮して判断します。症状が良くなって途中で内服を中止すると、再発してしまうことがあります。最後まで飲みきるようにしましょう。

梅毒の治療に必要な期間は、下記のように、感染からどのくらい経過しているかで変わってきます。

早期(感染から1年以内)

注射:1回

内服:2週間程度(1日3回、毎回2錠ずつ)

後期(感染時期不明)

注射:3回(1週間に1回)

内服:4週間~程度(1日3回、毎回2錠ずつ)

梅毒の治療にかかる費用は、概ね以下の通りです。当院では、自由診療・保険診療いずれも行っています。自由診療を用いる場合、「医療費のお知らせ」が自宅に届かないため、誰にも知られず受診し、治療を行うことができます。

治療費用の目安

飲み薬2〜4週間:5,500円/1週間分

注射:19,000円/1回

治療の豆知識

梅毒の治療後に熱が出ることがあります。

梅毒の治療を受けた後24時間以内におこる発熱は、10%~35%の確率で生じます。特に初期の梅毒治療を受けた方に多くみられます。

発熱だけではなく、頭痛、筋肉痛、悪寒、皮疹の増悪(治療開始時に皮疹があった場合)などを伴うこともあります。注射、内服どちらの治療の場合も1時間以内に症状が出現することが多いです。

これは、Jarisch Herxheimer Reaction(ヤーリッシュヘルクスハイマー反応)と呼ばれており、どうして熱が出るのか、詳しいことはわかっていません。

多くの場合、治療をしなくても12~24時間ぐらいで症状は消失しますが、解熱剤を使用しても問題ありません。

梅毒はどう予防するの?

予防には、コンドームの使用が有効です。しかし、コンドームが覆わない部分の皮膚や粘膜に症状があると感染する可能性があります。

感染を疑う症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。性行為を頻繁に行う方は、定期的に性感染症の検査を受けることをお薦めします。

検査での早期発見・早期治療が、自分とパートナーを守るために重要です。

治療後は治癒確認のための検査を受けましょう

梅毒の治療後は、治癒ができているか・再発がないかを確認するため血液検査を1ヶ月後に行います。詳しい内容は担当医からご説明させていただきます。保険診療での対応も可能ですので、医師にご相談ください。

梅毒に関するQ&A

梅毒に関するよくある質問を以下にまとめています。

梅毒になるとHIVにも感染しやすくなりますか?

梅毒の他、淋菌やクラミジアなどの性病に感染していると、粘膜の組織が弱くなるため、HIVへの感染リスクが数倍高まります。
梅毒の感染が疑わしい場合は、HIVの検査も一緒に受けることをお勧めします。

一度梅毒になったので、もうかからないと考えてよいですか?

梅毒が完治しても、今後の新たな感染を予防できるわけではありません。適切な対策(コンドームの使用、パートナーの治療等)がなければ、再び梅毒にかかる可能性があります。

梅毒にPCR検査はありますか?

硬性下かん(こうせいげかん)、粘膜疹などの病変を対象に検査をすることは可能ですが、保険の適応がありません。また、検体採取の手法によっては検出感度が落ちることが知られています。

梅毒の治療歴があるとワンコイン検査は受けられないですか?

ワンコイン検査自体は受けられますが、即日検査は受けられません。当院のワンコイン検査では治療歴のある方に通常検査を実施しております。結果をお伝えするまでお時間がかかります(通常3-5日)。

参考文献

厚生労働省 梅毒に関するQ&A

大阪府感染症情報センター

ステルイズ®について

▶日本感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン2020

この記事を監修した医師

<医師 塩尻 大輔>
パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。
国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。
日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。
当院でも非常勤医師として診療いただいております。