陰部にできものが…コンジローマとHPVワクチンの話
性器や肛門周囲にできものができる代表的な性感染症には尖圭コンジローマ、梅毒、性器ヘルペスがあります。
それぞれの症状には特徴があり、診断のヒントになります。尖圭コンジローマは再発率が高く、治療には時間がかかります。
治療だけではなく、再感染をおこさないための予防も重要です。
この記事では、陰部にできる「できもの」の原因や、その中でもコンジローマの治療や予防をわかりやすくまとめています。
・陰部や肛門周囲にできものを見つけた時は尖圭コンジローマ、梅毒、性器ヘルペスの鑑別が必要である。
・尖圭コンジローマはウイルスが原因の性感染症で治療に時間がかかる。
・尖圭コンジローマはワクチンで予防ができる数少ない性感染症の1つである。
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陰部や肛門周囲のできものの原因
入浴時や、性行為の際、陰部や肛門周囲にできものを見つけたことはないでしょうか?
すべてのできものが病的、というわけではありませんが、性感染症の可能性があります。
性感染症で代表的な疾患には尖圭コンジローマ、梅毒、性器ヘルペスがあります。
できものの見分け方
尖圭コンジローマ、梅毒、性器ヘルペスの症状にはそれぞれ特徴があります。
いぼ(隆起性の病変)が出現し、痛みはありません。
しこりが出現し、痛みはありません。足の付け根のリンパ節が腫れることがありますが、押しても痛みはありません。
水疱が出現し、痛みがあります。足の付け根のリンパ節が腫れることがあり、押すと痛みがあります。
尖圭コンジローマとは
今回の記事では3つの疾患の中でも尖圭コンジローマに関して記載します。
尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)感染による性感染症の1つです。
HPVには200種類以上のタイプがあり、この中で尖圭コンジローマの原因になるのは6型と11型です。
尖圭コンジローマは性的接触によって感染しますが、感染してから症状がでるまで3週間~8ヶ月(平均2.8ヶ月)かかるため、いつ感染したのかを特定するのは困難です。
また、再発率が20~30%と高いため、治療をしても再度、症状が出現することがあります。
尖圭コンジローマの症状と診断
性器や肛門の周囲にいぼが発生します。
形はよくカリフラワー状やニワトリのとさかのような形と表現されますが、粒状の表面をもついぼの場合もあります。
診断は性的接触の有無と特徴的な見た目を確認することで行います。
尖圭コンジローマの治療
塗り薬や液体窒素療法、局所麻酔を使った外科的療法などの治療法があります。
当院では塗り薬の処方と液体窒素療法を行っています。
皮膚科でいぼの治療をするときに使用する窒素と同じになります。麻酔クリームを使用してから治療を行うので、痛みはほとんどありません。
(料金)=(診察代)+(お薬代、処置代)
初診料:2,500円(税込)
再診料:1,000円(税込)
塗り薬(1~3週間分):3,500円(税込)/1週間分
液体窒素療法:10,000円(税込)
尖圭コンジローマの予防
尖圭コンジローマは、ワクチンで予防ができる性感染症です。
尖圭コンジローマは視覚的、触覚的に発見できる性感染症であるため、心理的不安や、再発を繰り返すストレスを感じる病気です。
感染したら抗体ができて生涯感染しないという訳ではありません。治療の途中でも新規の感染は起こりえます。
感染していても、症状が出現しない場合もあり、ご自身が治療中の場合、すでにパートナーの方は感染しているかもしれません。
ワクチンは治療中でも接種可能ですし、治療をうけているパートナーがいる方は、ワクチンを接種することでパートナーの心理的不安を和らげることが可能です。
HPVワクチンについて
ヒトパピローマウイルスワクチンという名前ですが、日本では子宮頸癌ワクチンとして周知されています。このワクチンは数あるHPVの中でも6、11、16、18、31、33、45、52、58型に対して予防効果があります。
9歳以上の方でHPV感染症のリスクを減らしたい方
HPVワクチン接種は、陰茎がんや肛門がん等の予防にもなることから、欧米各国では女性だけでなく男性の方の接種も推奨されています。
HPVワクチンの接種は、女性だけでなく男性に対しても非常に効果があります。
主に、下記2点の効果が期待できます。
・男性本人のHPV感染による病気の予防(コンジローマ、陰茎などの癌)
・自分が感染源とならないことで、パートナーのHPV感染症のリスクを抑える
HPVワクチンを接種することは、ご自身とパートナーを守ることに繋がります!
HPVワクチンの安全性は、下記の通り極めて安全であることが知られています。
HPVワクチンは世界で1億3,500万回以上接種されています。
15年間以上のモニタリングでも重大な副反応は報告されておらず、非常に安全性の高いワクチンです。
世界的に男性のHPVワクチン定期接種をすすめる国が増えています。
費用:1回あたり33,000円(税込)
接種回数:3回(または2回)
スケジュール:初回、2ヶ月後、6ヶ月後(または初回、6ヶ月後)
HPV9価ワクチンは、3回接種を受けなくても十分な効果が期待できると報告されています。(詳しくはこちら)
当院では2回のみの接種も推奨しています。
▶厚生労働省 9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて
▶CDC HPV Vaccine Safety and Effectiveness
▶日本性感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン 2020
<医師 塩尻 大輔> パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。 日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。 当院でも非常勤医師として診療いただいております。