大人のMMRワクチン~麻疹・風疹・おたふくかぜの検査と混合ワクチンについて~
麻疹・風疹・おたふくかぜ(ムンプス)はいずれも、大人が感染すると重症化するリスクが高く、死に至ることもあります。
近年、国内でも麻疹の感染者の報告があり、身近な感染症であるため予防をすることが大切です。
ここでは、麻疹・風疹・おたふくかぜの症状やワクチン、検査についてまとめて解説します。
この記事で言いたいこと
・麻疹・風疹・おたふくかぜは、いずれも大人が感染すると重症化するリスクがある。
・麻疹は、国内でも増加が懸念されている感染症であり注意が必要。
・1つのワクチンで麻疹・風疹・おたふくかぜのすべての予防が可能。
・抗体があるかわからない場合は、検査が可能。
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麻疹・風疹・おたふくかぜとは
麻疹・風疹・おたふくかぜはいずれも、感染力が強く、大人が感染をすると重症化するリスクがある感染症です。
2020年以降、麻疹の感染者数は全国的に減少傾向でしたが、2023年以降海外からの輸入症例を契機とした国内感染の事例が報告されています。今後も国内感染者の増加が懸念されているため、海外に行かれる方のみならず注意が必要な感染症です。
麻疹は合併症を引き起こし、死に至ることもある深刻な感染症です。
空気感染する感染症であり、麻疹の方がいた部屋の空気中には2時間もウイルスが生き残る可能性があります。
また、感染力は非常に強く、1人が感染すると、その人の近くにいる人の90%までもが感染するといわれています。
症状は、ウイルスに接触してから7~14日後に現れ、高熱、咳、鼻水などです。初期症状の3~5日後に発疹が現れるのが特徴です。
また、肺炎や脳炎といった合併症を引き起こし、死に至ることもある感染症です。
風疹も麻疹と同様、死に至ることもある感染症です。飛沫感染(感染している人が咳やくしゃみすることによりウイルスを含んだ唾液などが飛沫し、周囲の人が吸い込むこむことで感染)や接触感染(感染している人と同じ食器を使用する、ウイルスが付着したドアノブなどに触れた手で粘膜をさわり感染)が感染経路です。
麻疹と症状が似ていますが、麻疹より早く治ることから三日はしかとも呼ばれています。
症状は、発熱、リンパ節の腫れを伴う発疹などですが、感染者の約25%から50%は無症状です。
妊娠初期に風疹に感染すると、死産のリスクがあるほか、先天性風疹症候群(白内障、心臓異常、聴覚障害など)の赤ちゃんが生まれることがあります。
そのため、妊娠の可能性がある方、またその周りの方は感染予防が重要となります。
おたふくかぜは耳下腺の腫れが特徴の感染症です。飛沫感染、接触感染が感染経路です。
症状は、2~3週間の潜伏期間を経て発熱、頭痛、両側の耳下腺の腫れや痛みが出現します。大人は子どもよりも重症化しやすく、脳炎や卵巣炎、精巣炎、難聴などの合併症のリスクがあります。
MMRワクチンについて
麻疹・風疹・おたふくかぜの予防にはワクチンが有効です。
国産ワクチンは麻疹・風疹の2種混合ワクチン(MRワクチン)が主流となっており、おたふくかぜを含めた3種混合のワクチン(MMRワクチン)はありません。
しかし、アメリカやカナダ、オーストラリアなど100か国以の国では3種混合のワクチンが主流となっており、効果と安全性が認められています。
そのため、当院では3種混合の輸入ワクチンであるPriorixを取り扱っています。
効果については、1回接種により麻疹93%、風疹97%、おたふくかぜ78%、2回接種すると、麻疹97%、おたふくかぜ88%の予防効果があるといわれています。
現在、麻疹・風疹のワクチンは定期接種の対象となっており、子どもの頃に2回接種できる機会があります。
しかし、定期接種になる以前に生まれた方は未接種あるいは1回しか予防接種を受けていない場合があり、感染を防ぐために充分な抗体がない可能性があります。
ワクチンを接種しているか不明な方は、母子手帳で確認ください。
(新三種混合ワクチン)
内容:麻疹・風疹・おたふくの混合ワクチン
費用:1回あたり10,000円*(税込)
接種回数:1回または2回
接種スケジュール:初回、1か月後
注意:
・ワクチン接種によりアレルギー反応を起こしたことがある方は必ず医師に相談してください。
・妊娠している、妊娠の可能性がある場合は接種できません。
・HIV陽性者の方は必ず医師に相談してください。
*初回のみ別途診察料がかかります。(初診料は2,500円、再診料は1,000円、すべて税込)
MMRワクチンの副作用
一般的な副作用として、接種部位の痛み、発熱、軽い発疹が挙げられています。
いずれも、自然に軽快するものとなりますが症状がお辛い場合は保険適応で対症療法を行うことも可能な場合がありますので、一度ご相談ください。
また、当院で取り扱っているワクチンは、世界で一般的に接種されている実績があり、重篤な副作用が起こることは極めて稀です。
国内未承認ワクチンのため公的な補償制度がありませんが、万が一重篤な副作用が起きた場合は民間の輸入ワクチン副作用被害補償制度が適応になることがあります。
抗体検査について
抗体とは病気の原因となる細菌やウイルスなどが体内に侵入したときに、攻撃し外に排除する役割を担うタンパク質のことです。
つまり、体の中に十分な抗体ができていれば感染者との接触があったとしても、感染しないまたは感染してしまっても重症化しにくくなるのです。
当院では、抗体価(どれぐらい体の中に抗体があるのか)を調べる検査を実施しております。
ワクチン接種に悩まれている方は、まず検査を受けて抗体があるのかを確認するのも一つの方法です。
麻疹ウイルス抗体検査(EIA法):3,000円(税込)
風疹ウイルス抗体検査(EIA法):3,000円(税込)
おたふくかぜウイルス抗体検査(EIA法):3,000円(税込)
・検査のみの場合は、検査料金のみ請求させていただきます。
・医師と相談がしたい場合は、別途診察料がかかります。(初診料は2,500円、再診料は1,000円、すべて税込)
<医師 塩尻 大輔> パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。 日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。 当院でも非常勤医師として診療いただいております。