ワクチン

ワクチンで痛みは抑えられる!~50歳から始める帯状疱疹予防~ 

ワクチンで痛みは抑えられる!~50歳から始める帯状疱疹予防~ 

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は再活性化することで、皮膚や神経を攻撃し、帯状疱疹を引き起こします。

合併症(帯状疱疹後神経痛)を発症した場合、長期間にわたり痛みが継続するため日常生活に支障が出てしまいます。

ここでは、帯状疱疹の原因や合併症、ワクチン接種の有用性についてまとめて解説します。

この記事で言いたいこと

・帯状疱疹は80歳以上の約3人に1人が発症するほど身近な病気である。

・帯状疱疹を発症した人のうち約10人に1人は帯状疱疹後神経痛を合併してしまう。

・50歳以上の方がワクチン接種を行うと、帯状疱疹は97.2%、合併症である神経痛は100%帯状疱疹の発症を抑えることができる。

・HIV陽性の方は、免疫機能低下により帯状疱疹を発症するリスクが高くなるため、帯状疱疹ワクチンを接種いただく事が推奨される。

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帯状疱疹とは

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化し、帯状疱疹を発症します。痛みやかゆみを伴う発疹が特徴です。

初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した時は水痘(水ぼうそう)を発症します。

この時にウイルスは神経を通って神経節に住み着きます。水痘の症状が改善された後もウイルスは神経節に住み着いていますが、普段は悪さをすることはありません。しかし、免疫力の低下などによりウイルスが再び暴れ始めると、皮膚や神経を攻撃する帯状疱疹を発症してしまいます。

20歳以上の成人の水痘抗体保有率は95.2%であり、 成人の多くはすでに免疫を有していることが確認されています(図1:国立感染研究所から引用)。

つまり、成人のほとんどが水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがあり、帯状疱疹の発症リスクを有していることになります。

帯状疱疹の原因として加齢が挙げられており、50歳を超えると発症リスクが急激に増加します。

ある研究では80歳までに約3人に1人は帯状疱疹を発症するといわれているほど身近な病気なのです。

帯状疱疹の合併症

帯状疱疹は治療後に症状が改善しますが、帯状疱疹後神経痛(PHN)という合併症を発症し、長期にわたり痛みが続いてしまう可能性があります。

帯状疱疹後神経痛は「発疹発症後90日間持続する著明な疼痛」と定義され、発疹がなくなった後も続く痛みのことを指します。

針で刺されたような痛みや電気が走るような痛みが数か月から数年続くため、仕事に行くことが困難になる・家事ができなくなるなど日常生活に影響を及ぼすことが多々あります。

帯状疱疹患者の約10~15%が帯状疱疹後神経痛を発症するとの研究結果があり、非常に起こりやすい合併症ですが、ワクチンを接種することにより50歳以上で100%、70歳以上で85.5%の確率で合併症の発症率を軽減することができます。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹は抗ウイルス薬(ウイルスの増殖を抑える薬)と鎮痛薬(痛み止め)で治療を行います。

帯状疱疹の診断がつくと上記の治療が受けられ症状が改善するのですが、痛みのみの症状の場合、帯状疱疹であることに気付かれにくく治療を適切に受けられないことがあります。

そのため、当院では発症前に帯状疱疹を予防することをお勧めしています。

帯状疱疹の予防

帯状疱疹はワクチンで予防が可能です。

当院では、不活化ワクチンのシングリックスを取り扱っています。

シングリックスを2回接種した場合、50歳以上の場合、帯状疱疹の発症を50歳以上で97.2%、神経痛の発症を100%抑えることができるとの研究結果がでており、きわめて効果が高いワクチンとなります。

種類不活化ワクチン
帯状疱疹発症
抑制効果
50歳以上:97.2%
70歳以上:89.8%
神経痛
抑制効果
50歳以上:100%
70歳以上:85.5%
効果の持続9年以上
帯状疱疹ワクチン

費用:1回あたり22,000円*(税込)

接種回数:2回

接種スケジュール:初回、2か月後

*初回のみ別途診察料がかかります。(初診料は2,500円、再診料は1,000円、すべて税込)

HIV陽性の方へ

HIV陽性の方は、免疫機能低下により帯状疱疹を発症するリスクが高くなります。

そのため、帯状疱疹ワクチンを接種いただく事をお勧めしています。

当院が取り扱っているシングリックスは生ワクチンではないため、HIV であっても安全に使用できるワクチンです。

また接種時にHIV治療中であることを医療者に伝えていただくことは、必須ではありません。

接種に不安がある場合は専門的に診察を行うことも可能ですのでお気軽にお申し付けください。

この記事を監修した医師

<医師 塩尻 大輔>
パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。
国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。
日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。
当院でも非常勤医師として診療いただいております。