高山病を防ぐために〜出発前に知っておきたい準備と現地での過ごし方〜
標高の高い場所では、空気中の酸素が少なくなります。
そのため、体が環境に慣れる前に標高を上げてしまうと、高山病と呼ばれる体調不良が起こることがあります。
旅行や登山を安全に楽しむためには、出発前の計画と現地での過ごし方がとても大切です。
この記事では、高山病が起こりやすい場面、予防の基本、予防薬(ダイアモックス錠)について、分かりやすく解説します。
この記事で言いたいこと
・高山病は、短時間で急に標高を上げると起こりやすくなります。
・一番大切な予防は、あわてて登らず、高い場所に体を慣らす時間をつくることです。
・頭痛や吐き気、強いだるさなど、少しでも体調が悪いときは無理をせず、登るのをやめて休むことが重要です。
・高山病が心配な方や、短期間で高地へ移動する予定がある方は、飲み薬であり「ダイアモックス錠」の使用を検討しましょう。高山病予防に用いられる代表的な薬です。
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高山病の症状と起こりやすい場面
高山病とは、高地で酸素が欠乏することによって引き起こされる病気です。一般的に高山病は標高2,000m以上、多くは2,500m以上で発症すると言われています。
標高が高くなると空気中の酸素が少なくなり、体は低酸素状態になります。体が慣れる前に標高を上げると、次のような症状が出ることがあります。
よくある症状
・頭痛
・吐き気 食欲が落ちる
・だるさ
・めまい
・眠りにくい
起こりやすい場面
・飛行機などで短時間に標高の高い場所へ到着する
・到着した当日や翌日に、さらに高いところへ移動する
・過去に高地で似た症状が出たことがある
・高地に着いてすぐ運動量を増やす
標高が高い国
高山病は「登山される方のみ注意しなければいけないもの」と思われる方もいるかもしれません。実は国や都市そのものの標高が高く、登山をしなくても高山病になることがあります。
ウユニ塩湖やマチュピチュ、クスコなどは標高が高い有名な場所です。
旅行する際は観光する場所の標高も調べておくと安心です。
予防の基本:体を慣らす時間をつくる
高山病の予防で最も重要なのは、体をゆっくり高地に慣らすこと(高度順応)です。旅行計画を立てるときは、次の点を確認しましょう。
予定を立てるときに確認したいこと
・どの街で何泊するか
・どの夜にどの標高で寝るか
・どの日に標高が大きく上がるか
・最高でどのくらいの高さまで行くか
これらを確認した後、次のように予定を調整するとよいでしょう。
・到着初日は予定を詰めすぎず、休める日程にする
・可能なら一気に高い場所へ上げず、少し低い場所で数日過ごしてから上げる
・標高が高くなってきたら、同じ高さで休む日を入れる
現地での過ごし方
高地に到着してから最初の1〜2日間は、体が環境に慣れる大切な時期です。次のポイントを意識しましょう。
予定を立てるときに確認したいこと
・最初の48時間は激しい運動を避ける
・睡眠不足にならないよう早めに休む
・水分はこまめに取る
・飲酒は控えめにする
少し変だなと感じたら、その日は標高を上げずに休みましょう。
特に高山病の前兆として、下記のような症状に注意が必要です。
注意したい症状
・軽い頭痛が出てきた
・軽い吐き気 食欲低下
・普段より強いだるさ
・眠りにくい
この段階で休むことが、悪化を防ぐうえで大切です。
予防薬の使い方
予定の都合で急に標高を上げる必要がある方や、過去に高山病がつらかった方は、予防薬としてダイアモックス錠が役立つことがあります。
飲み方
標高を上げる前日から開始し、最高地点に到達してから少なくとも2日間継続内服してください。
推奨用量(成人)
125mgを1日2回
主な副作用
- ・手足のピリピリ感
- ・頻尿
- ・炭酸飲料の味の変化
薬の使用については、医師に相談したうえで使用することが大切です。
※サルファ剤アレルギー、急性腎不全の患者、重篤な肝機能障害の方は内服ができません。
当院では、ダイアモックスに加え吐き気止めや痛み止めがセットになった「高山病予防薬セット」の処方を行っています。
ダイアモックス錠:5錠
吐き気止め:5回分
解熱鎮痛薬:10回分
※状況に応じてダイアモックス錠を追加処方することも可能です。
症状が出たとき
症状がある間は、さらに高地へ進まないことが基本です。軽い症状のときは、その日はそれ以上登らずに、休み、翌日に良くなってから再開を検討しましょう。
下記の症状が出た場合は、我慢せず、下山や医療機関への相談を優先してください。
早めに下山や受診を考えたいサイン
・休んでも良くならない 悪化していく
・歩き方が明らかにふらつく
・安静にしていても息苦しい
・意識がぼんやりする 受け答えがいつもと違う
予約
お薬の処方には必ず医師の診察が必要となりますが、即日処方が可能です。ワクチンの接種と同日にお薬を処方することも可能です。
遠方の場合やご来院が難しい場合は、高山病予防薬の郵送が可能です(国内のみ)。お薬の郵送をご希望される方は、先行して電話診療を受けていただく形となります。電話診療は完全予約制でのご案内となりますため予約をお願いいたします。
<医師 忽那 賢志>感染症内科専門医、医学博士。 日本最大のトラベルクリニックを擁する国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)にて、約10年間渡航医学・輸入感染症診療に携わり、現在も診療・研究などを行っておられます。 他の専門領域は新興再興感染症、新型コロナウイルス感染症で、メディアやインターネットなど様々な媒体で感染症の啓発に取り組んでおられます。 当院でも非常勤医師として診療いただいている他、トラベル外来の監修も行っていただいております。
