ワクチン

HPVについて:世界に学ぶ予防戦略〜日本で今日できること〜

HPVについて:世界に学ぶ予防戦略〜日本で今日できること〜

ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV)に対するワクチンが開発され、世界中で使用されています。

今回は、HPVワクチンをいち早く定期接種として導入したオーストラリアの取り組みを中心にご紹介します。

この記事で言いたいこと

・HPVワクチンは世界で広まり、日本でも今後の接種拡大が期待されています。

・HPVワクチン導入後、オーストラリアでは若い女性の前がん病変が減り始めています。

・HPVワクチン導入後、オーストラリアでは若年層で初診時にコンジローマと診断される割合が低下しています。

目次の各項目をクリックすると、記事の途中までジャンプすることができます。

HPVワクチンの導入状況

2024年1月時点で、World Health Organization(WHO)加盟国194か国のうち、137か国(71%)が国家プログラムに導入し、導入国のうち59か国(43%)が性別を問わずに接種対象としています。

オーストラリア

2007年に女性から開始し、2013年から男性にも拡大されました。

学校での集団接種(学校接種)を軸に、国の公費制度として継続されています。

日本

公費の定期接種は小6~高1相当の女性が対象です(男性は全国一律の定期接種対象ではありません)。

2013年に定期接種が開始されましたが、接種後の症状に関する報告が相次いだことを背景に、国は積極的勧奨を一時差し控えました。

その影響で、出生年度(世代)によって初回接種率に大きな差が生じています。

2022年4月に積極的勧奨が再開され、定期接種を逃した方には公費助成(キャッチアップ接種)も行われました。

あなたはどれに当てはまりますか?

・小6〜高1相当の女性:公費で定期接種を受けられます。

・キャッチアップ接種を受けた方:2026年3月31日まで残りの接種を公費で完了できます。

※2022年4月から2025年3月までの間にキャッチアップ接種を1回以上受けている必要があります。

・上記以外の女性と男性:自費または自治体助成での接種となります。

HPV関連がんの動向

子宮頸がんは、まず細胞の変化が検診で細胞診異常として見つかります。

その一部が前がん病変を経て、長い時間をかけてがんへ進むことがあります(数十年かかることもあります)。

そのため、HPVワクチンの効果はまず細胞の変化や前がん病変の減少として現れ、時間がたってからがんの減少にもつながっていきます。

オーストラリアと日本では見ている指標は異なりますが、どちらも子宮頸がんに至る早い段階での変化を見ています。

両国のデータはHPVワクチンが子宮頸がんの予防に役立つことを示唆しています。

オーストラリア

HPVワクチンの普及に伴い、若年女性の前がん病変の検出率が著明に減少しています。

Who International travel and health

出典: Australian Centre for the Prevention of Cervical Cancer(ACPCC) Technical Paper 2022から抜粋

子宮頸がん検診を受けた女性1,000人あたりの前がん病変の検出率を年齢別に示しています。

HPVワクチンの普及後、特に20歳未満(水色)および20–24歳(オレンジ)で検出率が大きく低下しています。

日本

出生年(世代)ごとの集計として、日本の20歳時の子宮頸がん検診で軽度~高度の細胞診異常(ASC-US+)が見つかった割合は、接種率が62〜71%と高かった1994〜1999年生まれの世代で平均3.76%でした。

一方、接種率が約10%にとどまった2000年生まれの世代では5.04%でした。

これは個人の将来をそのまま示す数字ではありませんが、接種率が低い世代で細胞診異常が多い傾向がみられます。

Who International travel and health

出典: 20歳時の子宮頸がん検診における細胞診異常(ASC-US+)検出率 出生年別比較:接種世代 vs 接種差し控え世代。筆者作図(データ出典: Yagi A, et al. Lancet Reg Health West Pac. 2021から抜粋

子宮頸がん検診を受けた女性1,000人あたりの前がん病変の検出率を年齢別に示しています。

HPVワクチンの普及後、特に20歳未満(水色)および20–24歳(オレンジ)で検出率が大きく低下しています。

尖圭コンジローマの動向

HPVワクチンには、尖圭コンジローマの予防にも役立つ種類(4価/9価HPVワクチン)があります。

そのため、接種が広がると尖圭コンジローマは減少しやすいと考えられます。

オーストラリアでは若年層の尖圭コンジローマが著明に減少しています。

一方、日本では同様の減少は明瞭ではありません。

その背景には、(1)感染状況を把握する方法(指標)の違い、(2)HPVワクチン接種率の違いが関係し得ます。

オーストラリア

性感染症クリニックを初めて受診した人のうち、尖圭コンジローマと診断された割合を指標としています。

全年齢でこの割合は大きく減少しています。特に21歳未満の女性では、2007年の約10.6%から2022年には0.2%へと、ほぼゼロに近づきました。

2013年から男性への接種も開始しており、男性においても同様の減少傾向が報告されています。

出典: Annual surveillance report 2023から抜粋

子宮頸がん検診を受けた女性1,000人あたりの前がん病変の検出率を年齢別に示しています。

HPVワクチンの普及後、特に20歳未満(水色)および20–24歳(オレンジ)で検出率が大きく低下しています。

HPVワクチン導入後に全年齢で初診時に尖圭コンジローマと診断される割合が減少しています。

1歳未満は薄い青丸で示されています。

日本

国のサーベイランス(定点医療機関からの報告)にもとづく定点当たり報告数(定点医療機関1施設当たりの平均報告数)で動向が示されます。

15 歳~29 歳の若年者での尖圭コンジローマの発生動向は、男性は横ばい~やや増加傾向、女性は横ばいと整理されています。

日本で同様の減少が明瞭でない背景として、HPVワクチン接種率が十分に高くないことも一因になり得ます。

Who International travel and health

(図)日本における29歳以下の尖圭コンジローマの定点当たり報告数(男女別)の年次推移。筆者作図(データ出典: 厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた性感染症(STD)報告数の年次推移」、国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「感染症発生動向調査年別一覧(定点把握)-2023-」

HPVワクチン、受けていますか?

小6〜高1相当の女性(定期接種の対象)

自治体から届く案内・予診票を確認し、接種できる医療機関を受診しましょう。

キャッチアップ接種を受けた方

母子健康手帳などで「何回接種したか」を確認し、未完了なら早めに残りを接種しましょう。

2025年3月31日までにキャッチアップ接種を1回以上受けている方は、2026年3月31日まで残りの接種を公費で受けられます。

上記以外の女性・男性(任意接種)

定期接種の対象外でも、希望があれば任意接種として受けられます。

費用は原則自己負担です。まずは、かかりつけ医またはお近くの医療機関にご相談ください。

当院での接種をご希望の方へ

当院でも接種を行っています。

ご希望の方はお気軽にご予約ください。

この記事を監修した医師

<医師 塩尻 大輔>
パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。
国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。
日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。
当院でも非常勤医師として診療いただいております。