HIVが心配…日頃からできるHIVの予防薬とは?

当院の外来は、通常の内科診療と並行して性感染症外来を行っています。
性感染症外来では、HIVが心配という言葉をよく耳にします。性感染症と言われる性行為により感染する病気の中で、HIVは一度感染すると生涯治療が必要なため、心配になって受診に来られる方が多いです。
HIVを予防する方法はいくつかありますが、その中で予防効果が非常に高く、相手任せにならない方法として毎日飲み薬を飲むという方法があります。
この記事では、HIVに対して日頃から行うことのできる飲む予防薬(PrEP:プレップ)についてわかりやすくまとめています。
HIV感染のあるリスク行為があった際、HIV予防薬(PrEP)を服用していなかった場合、予防を行うには、緊急予防薬であるPEP(ペップ)を72時間以内に飲む必要があります。 PEPに関する記事は、こちらをご参照ください。
・HIV感染症は症状だけでは感染しているかどうかわからない。感染すると継続的な治療が生涯必要であり、予防が重要である。
・性行為で感染する病気の予防方法は様々あるが、HIVの予防として、PrEPは予防効果が非常に高く、相手任せではない方法として重要である。
・1日1回1錠の内服で予防効果は99%以上ある(デイリーPrEP)。
・当院では様々なPrEPの検査+処方のセットがある。また、個人輸入されている方への見守りセットがある。
・PrEPセットを使用されている方は、梅毒検査を無料、淋菌・クラミジア検査を特別価格で提供し、よりHIV感染リスクを下げる工夫をしている。
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HIV感染症とは
HIVとは、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)のことです。
HIV感染症とは、HIVのウイルスに感染し、体内の免疫力が下がっていく病気で、性行為で感染する性感染症の1つです。
何年もかけてHIVウィルスに体内の免疫細胞を壊され、やがて普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、どの病気でも治りにくくなります。
無治療の場合、いずれ免疫力の低下が著しくなりエイズ(AIDS)を発症します。
HIV感染症やAIDSは治療が劇的に進歩しています。しかし、まだ完全に治ることはありません。
そのため、HIVに感染しないための予防が重要になります。
性感染症の予防方法
性感染症の予防として、最も確実なのは性行為をしないこと、お互いに性感染症に感染していないことがわかっている相手とのみセックスすることです。
しかし、難しい場合も多いですよね。その他の方法として、一般的に性感染症の予防には次のようなものがあげられます。
コンドームは正しく使用すれば、性感染症予防として非常に有効です。
しかし、行為の最初からコンドームを使用していなかったり、行為中に破損すれば感染確率が上がります。
また、受け手側からすると行為中に相手に外されてしまうなどのリスクがあり、相手に任せる予防方法でもあります。
一部の性感染症(ヒトパピローマウイルスやB型肝炎など)は、ワクチン接種が有効です。
HIVに対しては有効なワクチンはありませんが、定期的な服用を行うことで、99%以上の予防効果を持つPrEP(プレップ)という飲み薬があります。
PrEPとは
PrEP(Pre-exposure prophylaxis:暴露前予防内服)とは、性行為等の前から抗HIV薬を内服して、感染リスクを減らすというHIV感染予防策です。
特にHIVに感染するリスクが高い人に推奨される予防方法で、「コンドームは相手任せの予防法ですが、PrEPは自分の意思で内服し、予防ができる」と、今ではWHO(世界保健機関)も勧めている予防法です。
こんな人におすすめ
・コンドームをしないことがある方
・コンドームをしてもらえないことがある方
・HIV陽性のパートナーがいる方
・肛門性交がある方
・セックスする相手が多い方
・性風俗関係のお仕事をしている方
PrEPの効果と使用方法
PrEPの飲み方は2通りあります。 月に2回以上性行為がある方はデイリーPrEP(毎日服用)を推奨します。
服用の仕方でわからない点がある場合は、医師に必ずお問い合わせください。
性交渉に関係なく、毎日1回1錠をご自身の決めた時間に服用します。
デイリーPrEPは99%以上の予防効果があり安全性が確立された服用方法です。
性交渉の前後に服用する方法です。予防効果は86%と報告されています。
性交渉の2~24時間前に2錠、その24時間後に1錠、更にその24時間後に1錠服用します。
性行為が数日続く場合:24時間ごとの服用を続け、最後に性交渉があった日から2日間は続けて1錠ずつ服用します。
*2回目の内服は性行為から24時間後ではなく、1回目の内服から24時間後になります。
当院ではデイリーPrEPの内服をお勧めしています。
オンデマンドPrEPはきまった時間に正しく飲む必要があり、飲み忘れたり正しい服用ができなかった際のHIV感染が報告されています。
デイリーPrEPの場合は、飲む時間がずれたり飲み忘れたりしてもお薬の血中濃度が下がりづらく、予防効果が落ちにくいです。
特に月に2回以上性行為がある方は、デイリーPrEPを推奨します。
PrEPの種類
当院では、PrEPとしてツルバダ(既存薬)・デシコビ(新薬)を採用しております。
PrEPには2種類のお薬(ツルバダ、デシコビ)があります。予防効果に差はなく、当院では価格の違いもありません。
広く使われていたツルバダは、長期使用の副作用として腎機能障害と骨粗しょう症の懸念があり、腎機能障害がある方や、骨粗しょう症がある方は特に内服に注意が必要です。
最近では、PrEPをツルバダからデシコビへ切り替える動きがあります。副作用がより少ないほうが長期使用での心配がほぼないためです。
オンデマンド(性行為の前後にPrEPを用いる方法)でエビデンスのある薬剤を使用したい方は、ツルバダの処方も可能です。
PrEPの副作用
新薬のデシコビは副作用が少なく、長期使用での腎機能障害や骨粗しょう症が少ないと報告されています。
短期:吐き気、腹痛、下痢、頭痛、皮疹
長期:腎障害、骨塩減少など
吐き気、下痢など
PrEPの費用
当院では、ジェネリックPrEPを用いて、安くかつ安全にPrEPが導入できるような工夫を行っています。
検査結果は即日のHIV・B型肝炎の検査と、メールで後日お伝えする梅毒・腎機能検査がセットになっています。
オンデマンドで利用したい場合は、PrEP1ヶ月セット(30錠)をご検討ください。
費用:11,000円(税込)
含まれているもの:
・PrEPボトル1本(30錠)デシコビまたはツルバダ
・HIV検査(即日)
・B型肝炎検査(即日)
・梅毒検査(メール)
・腎機能検査(メール)
費用:22,000円(税込)
含まれているもの:
・PrEPボトル3本(90錠)デシコビまたはツルバダ
・HIV検査(即日)
・B型肝炎検査(即日)
・梅毒検査(メール)
・腎機能検査(メール)
PrEPを個人輸入されている方は、見守り診療のセットをご用意しております。
費用:6,000円(税込)
含まれているもの:
・HIV検査(即日)
・B型肝炎検査(即日)
・梅毒検査(メール)
PrEPはあくまでHIVの予防方法です。HIV以外の性病の予防効果はないため、定期的に性病検査を受けることが推奨されています。
梅毒や淋菌、クラミジアに感染しているとHIVに感染しやすくなります。尿道や膣内、口腔内、肛門への感染によって粘膜の炎症が起き、粘膜のバリアが弱くなっているところにHIVが侵入してくるためです。
当院では、PrEP/PEPを処方する方に対して、梅毒検査を無料、淋菌・クラミジア検査を特別価格で提供し、よりHIV感染リスクを下げる工夫をしています。
淋病・クラミジア検査:+3,000円(通常8,000円)
PrEPの処方と流れ
PrEPの処方は、来院から会計まで含めておおよそ20〜30分かかります。
来院
当院ホームページまたは公式LINEから予約をお願いします。Web問診を事前に回答いただけると、来院後、スムーズに診察可能です。
*予約なしでご来院頂いても受診できますが、お待ちいただくことがあります。受付で「PrEP(プレップ)希望」とお伝えください。
医師の問診・診察
初診では、どのようなPrEP計画が望ましいか医師と相談します。
検査
HIV即日検査、B型肝炎即日検査に加え、梅毒の通常検査、腎機能検査を行います(およそ20-30分)。
2回目以降の方は、医師の診察前に検査を受けていただきます。
結果説明
医師から迅速検査の結果を説明いたします。質問などお気軽にご相談ください。
PrEPの処方
会計時に受付で薬をお渡ししますので、内服を開始してください。
2回目以降内服を継続する場合、来院後上記の検査を受けていただき、医師の診察および迅速検査で問題なければ、続けて処方が可能です。
PrEPに関するQ&A
PrEPに関するよくある質問を以下にまとめています。
お薬の保管はどのようにしたらよいのでしょうか?
お薬は乾燥剤入りのボトルに入っています。ボトルは室温で保管してください。冷蔵庫や高温になる車内などに置かないよう注意してください。
薬を飲み忘れてしまいました。どうしたらよいのでしょうか?
飲み忘れていることに気づいたらすぐに飲み、翌日はいつも通りの時間にお薬を飲んでください。
<医師 塩尻 大輔> パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。 日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。 当院でも非常勤医師として診療いただいております。
