HIVに感染したかも…今からできることは?

性行為をした後にHIVが怖くなった、途中でコンドームが破れてしまった、針刺しをしてしまったなど、当院にお問い合わせいただくことが多くなってきました。
HIV/AIDSに関して不安に思う方は、検査や予防の方法があります。また、PEP(ペップ)という、リスク行為後72時間以内に服用を始めることで、HIV感染を限りなく0にする方法があります。
この記事では、HIV/AIDSの症状や検査、予防(特にHIV緊急予防薬であるPEP)などをわかりやすくまとめています。
・HIVに感染しているかどうかは、検査をしないとわからない。
・感染確率は高くないが、HIVの検査しておらず早期発見が遅れてしまうケースがある。
・リスク行為後72時間以内であれば、HIVの感染を99%以上防ぐことのできるHIV緊急予防薬(PEP、ペップ)がある。
・当院は、従来の先発品PEPと比較し、1/4程度の値段でジェネリックPEPの処方が可能で、フォローアップの採血などもセットで行っている。
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HIV感染症とAIDSの違い
まず、HIV感染症とAIDS(エイズ)の違いについて、簡単に理解しておきましょう。
HIVとは、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)のことです。
HIVのウィルスに感染し、体内の免疫力が下がっていく病気です。
何年もかけてHIVウィルスに体内の免疫細胞を壊され、やがて普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、どの病気でも治りにくくなります。
いずれ免疫力の低下が著しくなりエイズ(AIDS)を発症します。
HIVウィルスが免疫細胞を破壊した結果、さまざまな病気を発症します。
この病気の状態をエイズ(AIDS:Acquired Immuno-Deficiency Syndrome、後天性免疫不全症候群)と言います。
代表的な23の疾患が決められており、これらを発症した時点でAIDSと診断されます。
HIV・AIDSの疫学
2021 年の国内の新規報告数は、HIV 感染者 742 件、AIDS 患者 315 件でした。
HIV 感染者と AIDS 患者の年間新規報告数はいずれも近年減少傾向です。ただし、保健所等における検査件数は、2020 年に前年の半数以下に減少し、2021 年は前年よりさらに減少しました。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う検査機会の減少等の影響で無症状感染者が十分に診断されていない可能性があり、注意が必要です。

HIVの感染確率はどのくらい?
HIVの感染確率は高くありません。しかし、近年は検査数が減少しているため、無自覚のHIV陽性者は以前より増えている可能性があります。
また、HIV感染が進行し、「いきなりAIDS」として発症してしまう新規患者は、検査数の大幅な減少と比較しても2020年は若干増加しており、注意が必要です。
過去の論文などのデータから、HIVの感染確率の目安を下記に示します。性交の種類や挿入する側かされる側か、等によっても感染確率が変わります。
針刺し:0.3%
肛門性交(挿入される側):1.38%
肛門性交(挿入側):0.11%
膣性交(女性側):0.08%
膣性交(男性側):0.04%
オーラルセックス:感染リスクはほぼなし
噛みつき:論文などのデータなし
HIVに感染しているかを知る方法は?
ご自身の相手がHIVに感染しているかは見た目や症状で判断はできません。
HIVに感染しているかどうかを知る唯一の方法は、「検査を受ける」ことです。
当院では、HIVに関する検査を迅速検査・通常検査ともに行っています。
費用:7,000円(税込)
検査可能時期:感染機会から4週間以降
検査の方法:採血
検査結果:30分後(院内でご説明)
備考:陽性となった場合、確定診断のためにさらに追加で採血が必要です。
費用:5,000円(税込)
検査可能時期:感染機会から4週間以降
検査の方法:採血
検査結果:1~2営業日後(メールで確認)
迅速検査・通常検査いずれも梅毒やB型肝炎の検査と一緒に受けることで、お得に検査をすることができます。
HIV緊急予防薬(PEP)とは?
PEP(ペップ)とは曝露後予防(Post Exposure Prophylaxis)の略で、HIVに暴露した後からでも内服で感染の予防ができる内服薬です。
HIVに感染したかもしれない行為後(曝露後)72時間以内に、PEP(抗HIV薬:HIVに対する治療薬)の内服を開始して、HIVに感染するリスクをほぼゼロまで低下させる予防策のことをいいます。薬の服用は1日1回28日間続けます。
HIVに感染している人やHIVのリスクが高い人との性的接触や医療事故(針刺し等)があった方で、感染リスクから72時間以内の方
例えば、
・コンドームをしないでセックスをした
・コンドームがセックス中に外れた
・不特定多数とセックスをした
・性行為した相手がHIVに感染していた
・性被害にあってしまった
・医療従事者で針刺し事故をしてしまった
相手がHIV陰性と判明している場合、ご自身がすでにHIVに感染している場合は対象となりません。
当院ではB型肝炎の即日検査で陽性の方も対象としておりません。(B型肝炎が増悪する可能性があるため)
PEPの予防効果と副作用
性行為後72時間以内に内服を開始し、適切に内服を実施すれば予防率は99%以上と言われています。
15年ほど前から、国内で医療従事者がHIV診療中での針刺し事故などをした際にPEPを行ってきましたが、PEPが普及した以降では、職業的曝露による HIV 感染例は認めておらず、失敗例は報告されていません。
PEPによる副作用として、数%の確率で吐き気・下痢などの副作用を起こすことがあります。
PEPの費用は?
当院では、ジェネリックPEPを用いることで、安くかつ安全にPEPが導入できるような工夫を行っています。
先発品のPEPは1錠10,000円程度と非常に高額(先発品を扱っているクリニックでは初診料や検査代を含めて300,000円程度)です。
当院ではジェネリックPEPを導入しており、当日および1ヶ月後の採血もセットになっており、先発品の1/4程度の金額でその後のフォローも同時に受けることができます。
費用:77,000円(税込)
含まれているもの:
・診察費
・ジェネリック薬30錠(2錠は予備分)
・HIV検査(即日)
・B型肝炎検査(即日)
・梅毒検査(メール)
・腎機能検査(メール)
・1ヶ月後のフォロー検査(HIV、梅毒、B型肝炎)
PEPの処方と流れ
PEPの処方は、来院から会計まで含めておおよそ1時間程度かかります。
リスク行為から72時間以内に受診
予約なしでご来院頂いても結構です。受付で「PEP(ペップ)希望」とお伝えください。
医師の問診・診察
医師がPEP適応の判断をします。
検査
HIVに感染していないこと、抗HIV薬を内服しても問題ない状態であることを確認するために血液検査を行います(およそ20-30分)。
医師による説明と同意書への署名
抗HIV薬の保険適応外使用に関する医師による説明と同意文書への署名をしていただきます。
PEPの処方
会計時に受付で薬をお渡ししますので、内服を開始してください。
フォローアップ
服用開始1か月後にフォロー検査(HIV、梅毒、B型肝炎)を実施します(PEPセットに料金が含まれています)。 その後、3か月後、6か月後のタイミングでHIVとB型肝炎の検査を適宜受けるようお勧めしています(有料)。
通常診療では暴露から72時間を過ぎてしまうなど、緊急性の高いPEP処方に関しては公式LINEからお問い合わせください。
PEPに関するQ&A
PEPに関するよくある質問を以下にまとめています。
PEPとPrEPの違いは何ですか?
PEPはHIVに感染する可能性がある性交渉「後」にお薬を服用し、PrEPは性交渉「前」に継続して服用することで、HIVを予防します。
インターネットでPEPは2錠と記載している記事を読みました。1錠で大丈夫ですか?
PEPは3種類の成分を服用する必要があり、医療機関によっては2種類以上のお薬を合わせて処方することで、3種類すべてをカバーしている場合があります。当院で処方するのは必要な3種類の成分がすべてが1錠に含まれております。
錠剤の「予備」とはなんですか?
当院で処方するジェネリック薬は1ボトル30錠入りですので、残り2錠は予備となります。28日間服用後、破棄してください。2日間分追加で服用しても構いませが、30錠服用することで効果が上がるというエビデンスは今のところありません。
<医師 塩尻 大輔> パーソナルヘルスクリニック院長、医学博士。 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)とパーソナルヘルスクリニックにて、HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供されています。 日本生まれですがアフリカのケニア育ちで、現地でも医師免許を取得しており、医療支援や教育支援等を実施されています。 当院でも非常勤医師として診療いただいております。
